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筋肉量と筋力と何が違う?サルコペニアを防ぐための対策

 当院心臓リハビリテーションでは月に1回体組成計を使用して、筋肉量や脂肪量、体脂肪率などを測定しています。心臓リハビリテーションを受けておられない方も有料ではありますが受けていただくことが可能です。その際筋肉量が少ないことと筋力が低下していることの違いを説明することがよくあります。もちろん両者は別物として考えなければいけません。

 筋肉量は家庭用の体脂肪計などでも測定することができます(正確かどうかは別問題です)。単位は㎏で表示されており、その名の通り筋肉の量をみています。サルコペニアはこの骨格筋量が減少している状態かつ、握力の低下や歩行速度の低下など運動機能の低下を来す状態を指します。

 では筋力はどうでしょうか。

 筋力とは筋肉が発揮する力です。物を持ったり、押したり、支えたりする際に感じることで理解できると思います。筋力があるから重たい荷物が持てる(実際にはそれだけではありません)、筋力があるから踏ん張って階段を昇ることができる、など生活を行う中で筋力は欠かせないものです。

 筋肉量と筋力の関係はどうでしょうか。

 筋肉量が減少すると筋力も低下することが多いです。これはなんとなく感覚でわかるかと思います。ただ筋力が低下しているからと言って筋肉量が低下しているとは限りません。

 例えば・・・

 AさんとBさんがいて、Aさんの方が、筋肉量が多いとします。しかしBさんの方が筋力が強いこともあります。それは筋力が体の大きさや腕の長さ、関節の柔軟性、痛みの有無などあらゆる状況が合わさっているからです。そのため筋力が低下している原因は筋肉量が低くなっていることだけではないということになります。

 また筋肉量が減少していても筋力が維持できていれば生活上問題になることは少ないです。逆に筋肉量がたくさんあっても筋力が低下していると生活に支障を来す可能性があります。このように筋肉量と筋力には明確な違いがあります。

 そのため大切なのはどちらもまず年齢の平均と知ることと、そして月日を追って体の状態を確認することにあります。心臓リハビリテーションで月に1回測定したり、運動の検査を半年に1回実施しているのはそのためです。過去の自分と比較して体の中身がどうなっているのかを知ることで変化やその原因を見つけることができます。

 筋力は改善しやすいですが、筋肉量は一旦減少してしまうと増やすというのは、高齢者にとってかなり難易度が高いです。ここではその理由は省きますが、大事なことは筋肉量を維持することです。

 そのため何度もお伝えしているようにサルコペニアの予防には栄養と運動という2本柱が大切です。

・筋肉の原料であるアミノ酸を多く含んだたんぱく質を摂取する。
・質のよい筋肉を作るために日常生活上での運動(洗濯や掃除・買い物・ウォーキング)をしっかり行う。
・筋力がしっかり発揮できるように柔軟性を維持し、正しい体の動かし方を習得する。
活動量が低下しないような工夫をする。

 さらに体だけではなく精神疾患や認知症などとも関連していることがわかっています。そのため
孤独や孤立を防ぎ地域でのコミュニケーションを大切にする。
・悪くなる前に相談できる、かかりつけ医を決めておく
訪問看護や訪問介護などを適宜利用するなど社会の仕組みも大切です。

 筋肉の話から社会の話になってしまいました。筋肉量の減少や筋力の低下、サルコペニア、フレイルなどすべてに通じることですが、単に運動するように指導したり、栄養指導することだけでは改善にはつながりません。その人が抱えている問題点をしっかり見極める力が我々には必要です。

 運動方法や栄養については今後もブログやホームページで発信していきますが、それ以上の関わり方ができるようにクリニックとしても工夫していきたいと思います。


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