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高齢化が進む日本は2025年に人口の約30%が65歳以上、約13%が75歳以上となると予測されています。

高齢化が進むことで心不全等の心疾患が増えることが予測されています。

もう一つ高齢化になることで多くなると予測されている病気が「認知症」です。

日本における認知症の高齢者人口の将来推計に関する研究では2020年に約675万人、65歳以上の約19%が認知症に罹患すると報告しています。

大切なことは高齢者に対する認知症患者の割合が増えなかったとしても、高齢者の数が増えていくということです。

つまり認知症患者は今後増えていく可能性が高いということを意味します。

今後増えるということがある程度わかっていることに恐怖や不安を感じる方もおられるかもしれませんが、準備や予防ができる可能性もあるため、悲観的にとらえることなく知識を増やしていきましょう。


まず認知症とは何かということを知る必要があります。
すべて書いていると膨大な量になりますので、ここでは大事なことを中心に書きます。

まず認知症は簡単に言うと「記憶」「学習」「判断」など脳の知的機能が、脳の器質的な障害によって低下し日常生活に支障を来すことを指します。

一番耳に馴染みがあるのはアルツハイマー型認知症ではないでしょうか。
認知症=アルツハイマーという認識の方もおられるかもしれません。

しかし大事なことは認知症(認知機能の低下)を引き起こす病気、状態はたくさんあるということです。

例えば脳梗塞や脳腫瘍などでも認知機能の低下は起こります。
また甲状腺機能などホルモンの異常やアルコール依存症、ビタミン欠乏症、薬の副作用などでも起こり得ます。

また認知症のような症状がでる状態、例えばせん妄や精神疾患などもあります。(せん妄の場合数日で改善することが多い)

定義が広いくこれらをまとめて認知症といっている場合が多いため、認知機能が低下している原因を鑑別することがとても大切です。


その鑑別には症状をよく観察する必要があります。

認知症の症状には中核症状BPSDという大きく二つに分類することができます。


・中核症状

脳の障害により起こる症状で認知症患者には以下のいずれかが必ずみられます。
[記憶障害、見当識障害(日付や今いる場所がわからない)、失語(言葉が出にくい)、失行(着替えなどの日常的な動作ができない)、失認(物を認識できない)、遂行機能障害(炊事や洗濯、料理などができない)など]

・BPSD

中核症状に付随して起こされる二次的な症状で、すべての症状が起こる訳ではありませんが多くの患者で以下のようないずれかの症状がみられます。

[不眠、徘徊、幻覚、妄想、抑うつ、暴力、不潔行為など]

生活をしていく中では中核症状よりもBPSDの方が家族の悩みや負担になることが多く、認知症の治療においてもまずはこのBPSDを少なくしたいという訴えが多くみられます。


診断には問診や認知機能検査、CTやMRIなどの画僧検査が用いられます。
すべての検査を行っても明確に鑑別ができる訳ではありませんが、可能性を除外して適切な診断、治療を繰り返していく必要があります。


そして鑑別に際してとても重要なことが家族さんからの情報です。
いつから、どんな場面で、どのような症状が出てきたのか。
生活の変化、例えば仕事を退職した、家族が亡くなった、強いストレスを感じる出来事があったなど詳細に時系列でわかると判断がしやすい場合があります。
また日記などで日々の出来事や発言、症状の軽快や悪化など変化が見て取れるものがあることも重要な判断材料になります。

その他にはこれまでの病歴や普段の食生活や生活習慣、運動習慣、趣味嗜好品などもわかるとよりよいかもしれません。



今回は発病から診断までの大まかな流れを書きましたが、診断された後の過ごし方や予防法や治療法など、まだまだたくさんの知るべき情報があります。

それらはまた項を改めたいと思います。


当院では金曜日の午前中に脳神経外科医による『もの忘れ外来』を行っております。
予約制となっておりますので、来院時又はお電話にてお気軽にご相談ください。