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文化人類学カフェ2014年12月

<メキシコにいってきました>

 2014年の10月末から11月頭の2週間、僕は砂連尾理さんと西川勝さん、文化人類学者の池田光穂先生と共にメキシコにいました。地球の裏側です。乾季に入ったばかりのメキシコはひたすら空が広く、からっとした空気で満ちていました。

 空港に降り立ったとき、気になったのが「匂い」です。柑橘系の、シトラスの香りとでもいうのでしょうか?鼻につんとくる匂いです。タクシーに乗っても、ホテルにいっても、その香りは僕らについてまわりました。洗浄剤の匂いだと思います。衣服ではなく、床や壁、シートに染みついた匂い。

 プルーストの長編小説『失われた時を求めて』では、マドレーヌの匂いで蘇った記憶を入り口に壮大な物語がスタートします。匂いから生々しく思い出がよみがえることがあります。

 予感として、僕は写真よりも、文章よりも、おそらく匂いで今回のメキシコを思い返す気がします。「記録」を匂いで紡ぐのは至難の技ですが、「記憶」は言葉や映像だけでなく匂いでも紡がれているのです。

※特別養護老人ホーム グレイスヴィルまいづる発行の『ぐれいす村便り(2014年12月号)』掲載分を加筆修正しています。


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