インターネット老人の昔話(2/3)
2017年ほどから、Vtuberと呼ばれる所謂架空のアイドルがネットを賑わせているようだ。
しかし、私のようなインターネット老人には脳裏に過るであろうコンテンツの話。何かを伝えたい訳ではない。
バーチャルネットアイドル
略してVNI
元祖と言えばちゆ12歳。19周年の12歳。最近ではVtuberにもなり、noteにもいる。
2001年、突如として現れたアイドルの概念を丸ごと吹っ飛ばすようなサブカルオタクニュースサイトである。由緒正しきオタクである事を隠そうともしないその姿勢は、現代でいうバ美肉の潔さに似ていた。
オタク達は元来このように偶像を作り上げては自分達で崇拝するという自家発電が得意なのである。現代のVtuberとは母数が違うものの、心理的には似たような作用がVNIにも働いていたのか、やはり雨後の筍のように様々なVNIが誕生していった。
キャラクター性を重視したVNIの中に、プロフィールに電話番号を乗せて「電話すると兄が出ます」という謎の取り組みを行っている者もいた。あれ、電話した人いるのだろうか?
だが、運営者がオタクの同志である事は誰も疑っていなかった。何故なら当時、このようなコンテンツに限らず、娯楽目的でインターネッツをしているのは大抵オタクであった。Made In オタクに何の疑問も持たずにいられたオタク生まれオタク育ち、心の故郷は秋葉原な孤独の共同体は、ネットとリアルを完全に切り離して暮らしていたのである。
もっとも、そのような特異なネット空間において、生身の女性は初代ポケモンでいうミュウみたいなものだったため、ネカマというバグ技を使わない限りお目に掛かれないものであった。
キモヲタ(死語)かと思ったら美少女だった、そんな密やかな煩悩をSTEINS;GATEとかが形にした。
※ジェンダー意識に対する意図はありません。
オタクの運営者達がこぞって理想像、或いはエンターテイメント性を追求していた。商品性が無いにも関わらず、リアルタイムで日々更新されていく(良質かは疑問だが)創作をそこかしこで見る事になり、元々は美少女ゲーム(マイルドな表現)の世界にしか存在しなかったような二次元存在が、オタク達のお人形遊びにより仮初の人格や指向性を持ち、虚構とも言っても差し支えない程の――
オタク達の夢の国が
(一部)ネット上に樹立したのである
しかし、そんな世界は長くは続かず、次第にキャラクターを創った運営者達の欲が暴走、または尽きたり、閲覧者の興味が移り変わったりと、(1/3)で述べたように様々な環境の変化などがオタク達を襲い、現代にも通ずるサイクルが重なった結果、数年程度でしめやかに廃れ散っていった。
とはいえ、それからも日記やエンターテインメントが消えた訳ではなく、ブログ等に移行していっただけではあるが、オタクが一丸となる求心力を持つオリジナルコンテンツは少なく、大多数は再び各々の興味のある地へと散っていった。ような気がする。
遡れば1989年、伊集院光のラジオ企画で架空のアイドルを作って社会現象を巻き起こしていたり、
2005~200x年、ニュー速VIPでは架空のコンテンツを作って釣るなんていういたずらが横行したり、何年経とうが、人々は相変わらず架空の偶像に現を抜かしているものだ。
実はUTAUでお馴染みの重音テトさんもその架空遊びで生まれたキャラクターである。
かくいう私腹話もニコニコに架空のボーカロイドを作って動画を上げたのだった。
ところで、架空の偶像という時点で意味が重複している気がする。
偶像とは、実像とは異なるという意味で使われる事があり、つまり実像のあるなしに関わらずアイドルは成立してしまうという事である。
もちろん継続運営上の諸問題はあり、各々が頭を悩ませている所ではあるが。
さて、これがほんの20年前とかの話である。
この先、更に20年が経った時、Vtuberもこのようなレガシーとなっているのだろうか。
20年後、Vtuberの進化系として人工知能がアイドルの役割を担い、老人達は「昔はアイドルの中の人を人間がしていたんじゃよ」などと語る日が来るのかもしれない。そして若者達は「人間の心理を人間が手探りで把握して人気を取ろうとするなんて、大変そうだな」と同情する世界だ。
そしてインターネット老人はインターネットあの世へ飛び立ち、インターネット仏となるのだろう。成仏して。
20年後自分が何をしているかなど考えてはいないが
生きていれば、20年前に歌っていた事は
憶えているのではないだろうか?
たぶんあなたの事も。
なんて嘘かも。
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げんぢつ
地獄
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