スターウォーズのBehind the Scenes大好きマン
少し前になるがスターウォーズドラマ『オビ=ワン・ケノービ』で、1977年よりダース・ベイダーの声を担当するジェームズ・アール・ジョーンズ(91)が続投する事が話題になった。
ジェームズ氏は2016年に同スターウォーズスピンオフシリーズ『ローグワン』でのダース・ベイダーも続投し、特有の「英国風米語」なアクセントに確かな帝国軍魂を感じたものだった。しかし、既にその頃には「加齢による声の変化」について語られる事も多かった。柔らかく、メローに変化したジェームズ氏の演技からは70年代当時のダース・ベイダーの鋭利さが薄れていた。
『超実写版ライオン・キング』のムファサ役も1994年版ライオン・キングと同様ジェームズ氏が続投していたが、こちらは父親としての包容力がありつつ王としての威厳を感じさせる声としてよく合っていたと感じる。
ダース・ベイダーはゲームシリーズや短編アニメなどでその姿を見る事も多い大人気キャラクターだが、大抵ボイスアクターは別人となっており、インパーソネーター(ものまね師)などが担当していた。その面から見ても、オビ=ワン・ケノービは本家映画シリーズと同様のジェームズ氏を起用する事で、本気度合が窺えるという訳である。
しかし私はこの件に関するとある事実に、全く気付かずにいた。
実は、『オビ=ワン・ケノービ』における70年代の声質を保ったジェームズ氏の声はRespeecherというディープラーニングAIによるものだったのである。
仕組みは、ジェームズ氏本人のガイド演技を収録し、後に過去のボイスアーカイブを合成するという物。実際声質自体は当時のままだが、声の流れは「ここでそうは来ないモンでは?」という若干の違和感を抱いた事も確かである。
ただ、「合成音声っぽい」という評価はキャラクターの世界観としてもバッチリ合っているために違和感が少ない。
ダース・ベイダーは、その見た目通りサイボーグである。とある戦闘に敗北した結果、身体の大部分を機械化した人物だ。特徴的なボイスエフェクトは、弱弱しくなった声をマスク内で拡張した人工音声という設定になっている。
プロダクション的にはMarshall Time Modulatorというディレイ、フランジャー、コーラスの混合エフェクターによって加工されたものである。
AI音声の話から少し外れるが、同スターウォーズスピンオフシリーズ(どんだけあんねん)『ボバ・フェット』『マンダロリアン』では、マーク・ハミル(当時67~8)がルーク・スカイウォーカー役を続投。スターウォーズ全編通して、最も容姿・声質が変わった人物と言っても過言ではないレベルの変貌を遂げているため、制作陣はあらゆる手を使って若きスカイウォーカーを復元した。
声にRespeecherはもちろん、顔もDeepfake、体はパフォーマンスアクターのグラハム・ハミルトンが担当しており、それらを合成した実質サイボーグである。こちらも、マーク・ハミル氏はグラハムと現場入りして実際にガイド演技をしながらグラハムに伝える形で携わっている。
このように、AI技術によって存命中の役者の意思を損なわずに若き日を演じる事が可能になりつつあり、まだまだ技術的に不自然な点は多いものの創作という視点で見ればなかなかにロマンを感じるという話。
私は一応、根幹に本人が携わってるなら良いんじゃないかなと思っている。ヨーダも人形師のフランク・オズが声を続投したままフルCGになったし。
かがくのちからってすげー!
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