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我が子へ

この1ヶ月、様々なことがありました。

わたしは妊娠し、母となりました。

生理予定日の過ぎたあたりから胃のむかつきがあり、妊娠検査薬で陽性を確認できたのが5月半ば。

産婦人科の内診で、波打つ心臓を見た先生に「おめでとうございます」と言われたのが5月29日でした。

その後つわりの悪化で重症妊娠悪阻という病名がつき、入院することに。
食べては吐く、食べなくても吐く、水を飲んでも吐く、しまいには吐血をして薬も飲めない状態となり、エンドレス点滴。

6月1日からは新しい職場でお仕事をすることが決まっていましたが、それもお断りせざるを得ませんでした。

産前産後含めて1年以上仕事ができない可能性が大きく、金銭的な悩みに毎日電卓を叩く日々。

パートナーはできる限りのことをしようとしてくれましたが、物理的な距離もあり、しんどい時に頼ることができず、またすぐにわたしと結婚できる状況でもありませんでした。

“おろさなければいけないのか”

そんな一文が頭をよぎりました。

けれども大好きな人との子どもです。
簡単にゴミとして棄てるなどわたしには耐えられません。
吐き気が辛うじて治っている間に、わたしはどうにかして産み育てる方法はないかと、我をも忘れて必死に考えました。

遠くに住む友人と共に子どもを育てることや
部屋が余っているパートナー以外の男性の家に住まわせてもらうこと、
実家に帰って育てること、
出産後は一時的に乳児院へ預けること、
風俗等で働き稼ぐこと、など

必死に考え出てきた選択肢は、どれも辛いものばかり。

そして
6月上旬。

誰をも頼れぬ状況、金銭的な悩み、そしてつわりによる心身の衰弱によって、粘って考えることもできなくなりました。

「おろしてほしい」

「おろすべきだ」

そんな声だけが、一際大きく聞こえてきました。

そしてわたしは赤ちゃんをおろすことにしたのです。

重症妊娠悪阻中の中絶手術は辛いものがありました。術前、術中、術後、お腹には絶えず強い痛みがありました。

手術から1週間経っても、座っていられないほどにお腹は痛み、身体は疲弊。
こころにはトラウマとして深く傷が残りました。


産みたかった。

育てたかった。

ドクンドクンと動く心臓を、
2週間前と比べて倍に成長している我が子をエコーで見て、この子のそばにいたいと強く思ってしまいました。

ひとりでお空に還すのはかわいそうで、
わたしも一緒にお空へ還ろうかとも考えました。

ですが、いのちは有限です。
早まる必要などなく、生き抜いて、生き抜いた先であなたと出会う方がいいのかもしれません。


わたしは中学3年生の時に
将来つけたい子どもの名前を決めました。
男の子と女の子、2つの名前です。

あなたが男の子か女の子かわからないけれど、わたしがつけた名前を、気に入ったものがあればどちらか好きな方を貰っていってください。

お空ではたくさんの人が
あなたの名前を呼んで抱きしめてくれるはずです。

一番最初にあなたのことを迎えに行くのは、はるみばあちゃんだと思います。
わたしと離れてしまってかわいそうに、と。
「床にも置かれんわ〜」と言いながら、きっと抱きしめてくれます。

よしあきじいちゃんにはチャーハンやあんこのお餅作ってもらってください。絶品です。
もうすぐ本格的な夏が来ますが、おじいちゃんに暑いことを伝えると、水と氷を入れたどんぶりのうつわをくれます。わたしはいまだにあれをどうすればいいのか、どう使うのが正解なのかわかっていません。
なのでおじいちゃんに会えたときには、わたしの代わりに聞いてみてほしいな。

みどりばあちゃんには会ったことがないのですが、写真見る限り怖そうな人...笑
でもきっと根は優しい人だと思います。


みんなに囲まれて、どうか幸せになってください。


あなたが生きていたら
どんな人に成長したのだろうかと
考えない日はありません。

保育園、小学校、中学校、高校、大学、、
どんな姿を見せてくれたのでしょうか。

たくさん笑って泣いて怪我をして、
他の子の輪にうまく入れずクヨクヨし、
勉強が楽しいと目を輝かせるときもあれば、
テストが嫌だとゲームばかりする日もあるのかな。
今日は唐揚げが食べたい!と元気にリクエストしてくれたかと思えば、連絡もなく遅くまで友達と出歩いて、わたしはひどく心配させられるのかもしれないね。
お母さんの買う服ダサい、これからは自分で買いに行く!などと言われ、ある日から突然口を聞いてくれなくなって地味に傷つき、
志望校の話や将来の具体的な夢の話をしてくれたときには、その内容にわたしは嬉しくなったり不安になったりするのかな。


あなたはどんな人生を歩んだのだろう。
どんな友達と出会い、どんなことに興味を持って生きていくはずだったのだろう。


産んで育ててあげられなくて本当にごめんなさい。

そして、ありがとう。

いのちの誕生は奇跡でしかありません。
再び妊娠できるのか、わたしのそのときの体調面、がんの再発や心臓の状態から無事に出産できるのか、など未来のことはわかりませんが、
いつかもしあなたに妹か弟ができたら、
お空からそっとその子の成長を見守ってくれると嬉しいです。



最期まで生き抜いたら、
必ずあなたの元へと飛んでいくから待っていてね。


わたしは世界で一番あなたのことを愛しています。



素敵な友人が心配して家まで来てくれた。
わたしの代わりに買い物をしてくれた。
本当に本当にありがとう。
精神的にめちゃくちゃ救われましたよ。
大好き。ふふ。

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