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7月18日。


2年前の7月18日。

未来へと希望を膨らませていた24歳の女の子は、わずかな光も届かない真っ暗な闇の中へと、たったひとり堕ちてしまった。

緊急事態宣言が出され、知らない土地に閉じ込められた女の子は、机の上に数学の問題集とA4のコピー用紙を置いて、お気に入りの4色ボールペンを力強く握っていたんだ。

自分を見失わぬようにと、しがみつきながら。

それは、休憩に、スマホを手に取るまで続いたよ。

ーーーーー

Twitterを開くとあなたの名前が出てきた。

へえ〜。
あなたとおんなじ名前の人が他にもいたんだ〜。
ってわたしは思ったんだよ。

でもちゃんと見てみると、あなたの写真が載っていた。

そう、あなただったの。

死んじゃったのは。


2日間、ずーっと泣いたんだよ。
目が覚めて起き上がることもできずに泣いて、
起き上がっても泣いて、ずっとずっと泣いて。

それから1ヶ月間は外に出られない日々を過ごしたんだよ。


あなたの死が、間違いなく、引き金となった。


わたしは自分が最初から崖っぷちに立っていたことに気づかぬフリをしていた。

だからあなたのお陰でわかったんだ。

自分のいる場所が。

崖っぷちに風が吹いて、一瞬でわたしは墜落した。



そんな状態でフリースクールに行ったらね、

担当のフェローが
『大丈夫?なんかあった?』って。

まだこころを開いていなかったから、
すぐには話せなかったけど、
あなたがいなくなって辛いことをこの人に打ち明けたんだよ。

そしたらさ、なんて返ってきたと思う?

『ここでは生徒も先生も、これまで何人も死んじゃってるんだよ...!』


衝撃的だったよ。

内容じゃなくて、そんなことをわたしに言う神経に。

でもね、あまりにもびっくりして、怒りを通り越して興味が出てきちゃって、

この出来事からわたしたちは毎週1回は必ず90分以上お話しをするようになった。

ほとんどわたしは話を聞く側だったけどね。

お陰で今では人と話せていた昔の明るい自分に戻ってきたよ。




初めてちゃんと心療内科にも通うようになったんだよ。
あなたが亡くなってから涙が止まらないって言ったんだよ。


病院に1年半ほど通って、ようやくこの3月くらいかな、わたしは主治医にこころを開けるようになった感じがする。


ーーーーー




あなたの大ファンだった、というわけではない。

でも一緒に大人になった、そんな感覚を起こさせてくれる俳優はわたしにとって、あなたしかいなかった。



『14歳の母』

中学生ってこんなに大人っぽいんだ...早くわたしも中学生になりたいな〜って思ったことよく覚えているよ。
あの時あなたは確か16歳だったよね。
「なんじゃい、高校生かっ!」ってひとり突っ込んだよ。


『恋空』

好きだったよ。
かすみ草もあなたもあなたの髪型も香里奈も小出恵介のことも。
真似してガラケーを図書館に置いたこともあるよ。
幸せですかって卓球部の部室に刻んだよ。


『ブラッディ・マンデイ』
部活のとき卓球しながらよくみんなで歌ったなあ。
24時間〜♪って(笑)
欠かさず観ていたのに、シーズン2の最終回だけ観れなかったんだ。
実はね、未だに観ることができていないよ。
観るのが怖いんだ。



他にも

『大切なことはすべて君が教えてくれた』
『僕のいた時間』
『わたしを離さないで』
『永遠の0』
『アイネクライネナハトムジーク』

...どれも観たなあ。


『こんな夜更けにバナナかよ』では
高畑充希さんがわたしの家の前、玄関の扉開けたところで撮影していたのでびっくりしたよ。



こどものあなたと共にわたしも成長して、
いつのまにか大人になった。


舞台『キンキーブーツ』を観た時は

いつのまにこんな凄い人になったんだっ!!って思ったよ。

これからが楽しみだって。

ああ、楽しみが増えたなって、思ったんだよ。

こどもや孫の成長が楽しみ、それと同じような感覚だったから不思議。


あなたの存在はわたしがこれから先を生きていくための理由のひとつだったんだよ。


明るい理由のひとつだったんだ。




ーーーーー



7月19日。

優しい人はなぜ

何も言わずに

去っていくのか。


わたしだけが歳を重ねていく。

その現実をどう受け入れるべきなのか。

毎日わたしは少しずつ自信を喪失していく。


わたしより、

あなたが生きるべきだった。

あなたには生きていてほしかった。


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