その人は…
たまたま席が隣だった異性との話。
その人の第一印象は薄く、地味な人としか思わなかった。出会った頃の記憶は、今も曖昧である。
ある日、その人が私の誕生日を祝ってくれた。不意をつかれたお祝いだった。人生はじめてのサプライズ・バースデーである。とても嬉しかった。
落書きされたキャラクター入りの小さな紙に包まれたクッキーをもらったことは、覚えている。不思議な気持ちだった。
このときから、視界にその人は入るようになる。いつしか一緒にいることも増え、よく遊びにも行った。
告白をした。その人は泣きながら、はいと返事をくれた。無意識にその人を抱きしめていた。同時に私も涙した。
残念ながら、その人はもういない。悲観に暮れることがあった。なんとか、空元気を出して強がってもみた。目の前の失恋という事に、囚われ過ぎていたように思う。
振り返ると…良いこともあった。自然と優しい言葉を言えていたり、なかなか出来ないことをしていたと思う。
もしもあのとき…と仮定することがある。すべてが過去を仮定した仮定法過去(完了)だったと思う。過去ばかり仮定していると、気が滅入る。
現在は、過去の良かったことだけを持ち越して、今に至る。そういった良かったことは、自信に変わっている。そして、未来を仮定する発想を得た。
もしもこれから…と仮定すると、目の前が広く感じるようになった。これに自信が伴うと、その自信が、私を前に動かしてくれる根拠になっているように思える。未来の仮定に引っ張られて…
過去を見たり、未来を見たり…本当に夢のようであった。
【両の手を
伸ばし求めど
届かなく
いつかを願う
両の想いを】
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