見出し画像

阪神淡路大震災から27年。記録することの大切さとジレンマ

1995年1月17日 午前5時46分

兵庫県の淡路島を震源とする大地震が発生。
兵庫県の阪神地区から明石市と淡路島を中心に、6000人以上の死者と建物や施設等に多大な被害を受けました。

当時の私は、19歳。
大学1回生で、当時は加古川の実家に住んでおり、強い揺れを経験しました。
最初は下からの強い突き上げから始まり、その後はしばらく横揺れが続いていました。
この時期といえば、後期の試験が始まる頃。
ライフラインが止まり、通学すらできず試験もどうにもならない状況でした。
最初はラジオで情報収集するしかなかった私。
以降、ずっとテレビやラジオで情報収集しつつも、大学へ連絡、自宅待機するしかない状況でした。

あれから27年。
震災発生時刻の5時46分に黙祷し、被災された方々への冥福と風化防止を祈りました。

阪神淡路大震災の体験や出版物など、語りたいことはいろいろあるのですが…
このnoteはあくまでカメラ・写真がテーマですので、本記事もそれに沿って紹介していきます。

前置きが長くなりましたが、今回は過去に放送されたテレビ番組の中で、ある報道カメラマンの震災における写真撮影についてのエピソードを紹介します。

ある報道カメラマンの後悔

2017年9月、写真家のドキュメンタリー「The Photographers 4」という番組が放送されました。(下記リンクよりご参照ください)
その中で、報道写真家・渋谷敦志さんが特集され、この中で阪神淡路大震災発生時の当時のエピソードを語られていました。

渋谷さんは1975年、大阪府出身。つまり、大阪府も強い揺れに見舞われています。
震災発生時、渋谷さんは被災地に直接来ていました。しかし、この時は当時の状況からシャッターを切ることができなかったそうです。
そのエピソードの一部が、こちらです。

(阪神高速道路の崩壊現場を見て振り返り)
鉄橋が倒れていたんですよね。
もちろん写真を撮りに行ったんだけど、この辺に被災者や自転車や徒歩で行き交ってるんですよ。
リュックからカメラを出すのも罪のような感じがして、一枚も撮れなかったです。
BS朝日「The Photographers 4 〜写真家という生き方を求めて〜」
2017年9月22日放送より

渋谷さんがシャッターを切ることができなかったのは、現場で見た衝撃と被災者感情等を鑑みて、という心情だったのではないでしょうか。
この出来事が、報道写真家の過酷さを初めて知ったというのです。

こういう場面を撮影するのは、かなり複雑な心境だとお察しします。
面白半分じゃない。それはわかってます。
その一方で、レンズを向けられることに抵抗を感じる人はいます。しかも大変な状況の中で避難している時に「何撮ってんだ!」と怒号を浴びせられても仕方ないと思います。

しかし、記録することで当時の大変な状況を広く知ってもらうのはもちろんのこと。
記録を通じて震災を風化させない、次に発生する災害対策に生かされるのでは、と思います。

当時はインターネットが発達してなかったのと、まだフィルムカメラ中心だったため、現在のように誰もがカメラを持っているとは言い難い時代でした。
もちろんSNSなどありませんので、発信手段は大手メディアしかいない状況です。
しかし、レンズを向けられると嫌がる人がいるのも当然。しかも大変な時に向けられると、精神的にきつい。
それでも、シャッターを切りたかった。そりゃそうだ、と思います。

今のSNS時代における、報道を含めた写真の在り方

現在はネットが発達し、SNSが当たり前のように使われ、利用者全員が情報発信できる時代です。
しかし、いくらスマートフォンが普及しているとはいえ、被害状況を伝えたいがために軽々しく撮影するものではありません。
肖像権など人権に関わる問題がつくからです。

また、現在ではカメラがデジタル化されたことで、フィルム時代よりも手に入れやすくなりました。
しかしレンズが大きいため、レンズを向けられるとそれだけで抵抗感は半端なく増大します。
だから、人に配慮しながら被写体にレンズを向ける、シャッターを切る。その心構えは今の時代に必要な要素なのではないかと思います。
特に、報道カメラマンは気遣いが必要であるとともに、次世代に向けて残していくことも大切だと思います。
当時の様子を表す「記録」であり、これからの災害に備えた「財産」ではないでしょうか?

阪神淡路大震災を経験した者の1人として、震災を風化させないために。
東北をはじめ各地で発生した震災の風化抑止、これから発生すると予想される地震への備えのためにも。
SNS時代の中で、特に肖像権など複雑な葛藤はあると思います。
しかし、記録目的での写真は、ルールやマナーの遵守を前提で撮影した上で、その後に大切な財産となっていくでしょう。

お読みいただき、ありがとうございました。
ご意見、ご感想などありましたら、お気軽に下のコメント欄へご記入頂ければ幸いです。(メンバーのみ)

私自身の作品づくりはもちろん、カメラや写真の明るい未来を信じて活動します。 いただいたサポートは、喜んで有効に使わせていただきます。