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君はバカじゃない、絶対に

多様な性を切り口にした人権や多様性の講演を行っているが、11月は繁忙期だ。


学校をメインで動いていると、ちょうど行事がなくテストもないこの時期はいろいろと研修や講演会を入れるのにいい時期らしく、毎年11月はいつもより多い。
ありがたいことに今年も、いくつかの場に呼んでもらっている。

先日書いたように、俺は講演先で、なるべく事前に質問を回収するようにしている。


1対多数の講演の形態だと、聞き手の人たちとコミュニケーションがほとんど取れない。そのため、聞き手の人たちがどんなことに関心があるのかなどを知る貴重な機会として、重用している。

内容は俺の性別についての質問やカミングアウトのこと、メディアや社会での少数派の扱われ方についての見解など、大抵は多様な性に関する質問が集まる。

でも、ある学校に行った時、こんなものを見かけた。


「僕バカだから勉強ができません。勉強方法を教えてください。」


しかも、この質問は一つだけじゃなかった。1人2人じゃない、複数。



『僕バカだから』

ショックだった。

君にそんなことを言わせたのは誰だ。何だ。


自分をバカだと思って生まれてくる人はいない。自分をバカだと思う赤ちゃんもいない。
どこかで見聞きしたり、誰かに言われて、君はそんなふうに思ってしまったのかと思うと本当に痛かった。

バカじゃないやろ。
勉強が、というよりある科目のある単元やある問題が、周囲の人に比べて理解がゆっくりだったり解くスピードが遅いだけで。

人と違うのは、バカじゃないねん。


勉強に関して言えば、
・内容のズレ:自分が理解できている段階と、学んでいる段階が合っていない
・方法のズレ:学校や塾での学び方の形態や環境が、自分と合っていない

が大半やろうし、発達等の関係で努力の有無関係なく、どうしても理解できなかったりスピードが上がらないこともあるやろ。

そもそも、運動でも得意不得意があるように、勉強も得意不得意があると思う。
長時間机の前に座ることや、文章を読み書きすることみたいな勉強に伴う動きが、苦になる人もいればそうでもない人もいるんやから。

でも、「勉強方法を教えて」と俺にわざわざ書いてくるほどに、君はそのことに向き合っているんだろう。
勉強ができるようになりたいと、願っていることなんだろう。

頑張りたいって思うこと、どうにかしたいって思うことは、立派ではあってもバカなはずないよ。


どんな違いであっても、ただの違いとして扱われてほしい。
バカでも賢くも良くも悪くもなく、ただその人に合ったサポートや環境が得られたり、寄り添いあえる関係性が溢れていてほしい。

時に、自分のある部分は人とは違うと思うことがあっても、
誰も自分をバカだ、なんて思わないように。
誰も自分を変だ、だめだ、なんて思わないように。


勉強方法の質問には、時間の関係でほぼ触れられなかった。
だから最後の挨拶の時、「性のことではないけど、勉強について質問があったからそれだけ言うね」と前置きして。

真顔で、落ち着いた声ではっきり言った。


「バカじゃないよ、バカな人なんていないよ」


どうか君に届いてくれ。
君はバカじゃないんだよ。

そうやって、ハッキリ言う大人がひとりはいるんだって、覚えていてほしいんだ。

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