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全部がある。俺はここにいる。【表面張力ART】

Produced by アート集団「表面張力ART」

Stylist:高谷 麻里
Hair and Make up:古元葉子
Photo:八田 梓

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細い手首が、狭い肩が、小さな手足が、女性的な胸が、嫌だった。

季節や天気の変化やストレスで、すぐに動かなくなる体が、嫌だった。

他者や世界の痛みに揺れる、自分の弱くて繊細で敏感なところが、ずっとずっと嫌だった。

俺はどうして人と違うんだろう。
どうしてこんなに弱いんだろう。
どうして皆と同じことができないんだろう。

ふつうに働くことが、生活することが、生きることが、どうしてこんなに大変なんだろう。

他者がこわくて、社会がこわくて、世界がこわくて、俺はいつも緊張していた。

友達や大切な人を俺から奪っていく世界が憎くて、お前は異質だとまざまざと見せつけてくる世界がこわくて。

俺の中には、たくさんの悲しみや恐れや怒りが渦巻いていて、時々それらは、内側から焼かれるような痛みになって外に出てきた。

そんな中で、写真を撮ってもらうことを決めた。

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『そのままのあなたが好きだよ』
『一歩ずつ、ゆっくりいこう』
『今、感じてることは、いまのあなたしか感じられないことだから、大事にしよう』
『不安のままで一緒に安心を作ろう』
『応援してるよ』

なんども、なんども、なんども、声をかけてくれた。
時には電話したり、森の中に連れ出してもらったこともあった。

髪を整えてくれた。
服を一緒に選んでくれた。
イメージを問うてくれた。

ここに至るまでに、皆が少しずつ俺の手を引いて、信頼できる世界を見せてくれた。

撮ってもらう数日前、プロデューサーの友人にメッセージを送った。

『一番否定してきた弱さを、繊細さを、儚さをそのまま出したい
そのままを晒す強さを、美しさを、残してほしい

俺が一人ではわからない、そこにあるものを、どうか写真を通じて俺に教えて欲しい』

受け止めてもらえた。
サラシを巻きたいという提案にも、二つ返事で了承した。

一人では見つめられない、俺がいままで嫌って一番否定してきた部分を、一緒に照らしてもらいたかった。


そうして、これができた。


ちゃんとあった。
繊細さが、儚さが、悲しみが、怒りが、意志が、強さが、美しさが、ちゃんと全部そこにあった。

ちゃんとあって、ぜんぶ大事だって、思った。
ちょっと泣いた。うれしくて。

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それでもまだ、からだも中身も、すっかりすきになれたわけではありません。

きっとこれからも悩むでしょう。

このままのおれでいるのは、こわいです。

これをひとに見てもらうのも、こわいです。


でも、

これがおれです。


弱くても、弱いまま、違っていても、違ったまま

おれはここにいます。

おれはここにいたいです。


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求めたものは一つとして
与えられなかったが
願いはすべて聞きとどけられた

神の意にそわぬ者であるにもかかわらず
心の中の言い表せない祈りは
すべてかなえられた

私はあらゆる人の中で
最も豊かに祝福されたのだ

(『苦難にある者たちの告白』より抜粋)

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