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日常からの3mmの逸脱

東京で電車に乗ったら、座席0距離にゲ…吐瀉物があった。

乗った時には気づかず、吊り革に捕まってちょっと後ろに下がろうとしたら、トン、と背中を押されて振り向いたらそこにあった。

先に被害に遭われたらしいショートカットの女性が複雑な表情で立っている。彼女が俺が踏まないように守ってくれたらしい。ありがとうございます。

次の駅で駅員さんが数名乗ってきて、籾殻みたいなものを振り撒いて、ビニールを巻いた塵取りにサッサと片付けていく。

この人たち、たくさんこんなお仕事してくれてるんだろうな。
新入社員で入社したときは、仕事で他人の吐瀉物を片付けるとか思ってなかっただろうなぁ。言葉通りの汚れ仕事も引き受けてくれて。
ありがとうございます。
(俺はすぐこうやって他人の背景を勝手に想像する癖がある)

彼女はどうやら踏んでしまったらしく、片付ける駅員さんからティッシュをもらっていた。
靴を拭う彼女を気の毒に思って、濡れた紙手拭きを提供した。
まい泉のカツサンドの店員さん、多めに手拭きくれてありがとうございます。

踏んでしまったからなのか、次の被害者をださないためか、彼女は友達と来ているらしいのにドアのそばにずっとたっていた。
仕方なかったのかもしれないけど、もしかしたら優しさもあるのかもしれない。

片付けが終わって駅員さんが去り、電車が出発する。
俺の隣がたまたま空いていたから、隣に彼女が座った。

なんとなく「大変でしたね」と声をかけたら、「ほんとに!」と憤慨していた。
特に会話は続かなかったけど、変な縁だなぁ…と不思議な気持ちになる。

東京。

トイレに脱ぎ捨てられたパンツがあり
真っ昼間の電車内に吐瀉物があり
それを踏んだ人がいる、東京。

でも片付ける人がいて、
守ってくれる人もいる、東京。

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