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30代独身、自分が何者かを考える


職業が全く違っても、悩む事は同じ

2年前、とあるきっかけで出会った若手芸人の子の話。

まるちゃん 

芸歴3年目、ハタチだったかそのぐらい。

出会った縁もあって、僕はその子が出演するライブをちょこちょこ見に行くようになった。

何より、昔からお笑いが大好きで、人生で大切なことはお笑いから学んできたと思っている僕は興味があった。
駆け出しの若手芸人が、どうやって売れようとするのかに。

初めてネタを見た時は、正直対して面白くもなく、ライブ終わりに感想を求められても、
「あ、あぁ良かったよ」
と嘘をついていた。
駆け出しでも、舞台の上に上がっている以上、プロのお笑い芸人に、素人が意見するのは良くないなと思ったからだ。

スベっている、のは本人も気付いていたし、
芸人を続けていけるのか、不安に思っていた彼女は

なんとか自分を知ってもらおうと、
ネット上で動画配信を始めたり
特技のバルーンアートで大道芸をしたり、
真夏に劇場前でたこ焼きを焼いたり、

合ってるのか合ってないのか分からない努力を
自分なりにしていた。

悩んでいる時もあった。
動画配信を始めてから、変な人に絡まれるようになり、女芸人だからか、気持ち悪いメッセージが毎朝のように送られてくる事もあったそうだ。

組んでいたコンビを解散し、ピンになり、
色んな相方とお試しでコンビを組み、試行錯誤していた。

定期的に僕はライブを見に行った。
どれもそれは面白いと言えた物ではなかった。
まるちゃんには致命的な原因があった。

まるちゃんの憧れている笑いの取り方は、
まるちゃんには出来ないということ。

まるちゃんの人間性と
まるちゃんのネタが合ってないこと。

何度か舞台終わりに話したり、
今まで1年をちょこちょこ見てきて分かることがある。

まるちゃんは、性格が曲がっている。

それは決して悪いことじゃない。

王道のボケツッコミ、勢いで取る笑いは、まるちゃんの人間性に合ってない。

もっと人間性にそった、捻くれ者のネタをやるべきだと思った、が前述の理由で中々言えなかった。

そしてまた日が経ち、まるちゃんの舞台を見た。

「はいどーもー」

「まる、漫画のヒロインになって、イケメンを手のひらで転がしたい!」

お!おお!
まるちゃんは捻くれた女の子のキャラクターとなり、毒づき、サイコパスな女の子を演じた。

会場からはクスクス笑いが起こり始める。
そして、確実に、何度も笑いが起きた。
決して大きな物ではないが、確実に。

舞台終わり、まるちゃんと話した。
僕は嘘偽りなく
「よかった、面白かった、まるちゃんのキャラが定まってきたね」と言えた。
「ネタの構成が飛び飛びだから、お客さんはついて行きづらい、シーンを想像するのに時間がかかるから、繋ぎの部分を丁寧にした方がいい」
僕も、思った事は言うようにした。
「やっと、笑いが起きてきて、手応えが出て来た!」
まるちゃんは満足そうにそう言った。
色んな試行錯誤や、闇を抜けて良かったなぁと思った。

まるちゃんの努力や不安を見て思った。

これは、僕が仕事で悩み続けた事と一緒だ。
今も悩んでいること。

まるちゃんだけではない、そのライブに出ている他の芸人さん達も、自分を見つけてもらおうと、自分の笑いの取り方とは何なのかを探している。

仕事に置き換えるとするなら、
数字や結果を出す、と言うゴールはみんな一緒だけど、
そこに向かうプロセスや運営は人によって違う。


僕が出来る仕事とはいったい何なのか。

正攻法や王道の方法では勝ち残れなかった人間が出来ることはいったい何なのか。


僕は一体、どういう人間なのか。


僕は未だに、お笑い芸人に大切なことを教えられている。




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