この世界の片隅で
シナの世界のハイシーズンが終わろうとしている…
いや、実際には来週、再来週、梅雨が続けば続くのでまだ終わらないといえば終わらないが…
6月中旬、シナの木から皮をはいで始まった一連の作業が、煮た釜の数を数えることによって終わりが近づいているのを感じる。
この世界…シナ界は、あと20年もすれば無くなってしまいそうな世界の中で、色んな人たちの想いが交錯し、悲しみを生み、苦しみを生んでいる。
後継者、後継者言われるが彼らが思う後継者はなかなか育たない
自分の子どもに教える以外に育てるすべを知らぬ者と、教わる以外に覚えるすべを知らぬ者と…
そんな世界に入って5年目
シナで食べていないしシナを織っていない
ほそぼそとシナ世界の片隅で皮をはがせてもらい、糸を作っているだけの
それがとてもありがたい
毎年毎年煮て、こいて、ぬか漬けしての工程を気が遠くなるほど繰り返す
やっと戦力になれてきたかもしれない私を
受け入れてくれた親子のおかげなのだ
自分でやらなければ手に入らない世界で
自分だけじゃどうにもならないことを
差し出された手と差し出した手でなんとかやっている
いつまでやれるのか
のこの世界の片隅で
私にできることは粛々と続けていくことだと信じて
それに出会えたおかげで
苦しまずにいられるのだ
一生のうちでそういうものには
ほとんど出会えない
出会えたら、大切に。大切に。