【短】飲食店の「お冷」について

我らが愛しき太陽系第三惑星にて「お冷」という液体の存在が観測されている。今日学食でかき揚げうどんという固体を食べに行ったとき、いっしょにそれを頼んだ。液体と固体を同時に飲み食いするとうまいよ、と私が贔屓にする新橋のそば屋のおっさん(気体)に聞いたからだ。
まあ、頼んだ、というよりは、レジの横に飲み物サーバーがあって、会計を終えた客がそこにあるコップに勝手に注いでいく方式だが。お冷を金を出して「頼む」なんて、ここは川越シェフのレストランではないし、川越線のラストランでもない。おそらく、川越シェフの陰謀により川越線の廃線が決まった暁には、ラストランにてJR東日本の社員一同より乗客の皆様への感謝の気持ちを込めたお冷が出血大サービスで配られるであろう。もちろん有料で(200円/杯)。

しかし私は知っている。お冷なんて注いでも飲まない。ならばなぜ注ぐのか、といえば、「非常用」だ。万が一食事中に喉が渇いて仮死状態になったときのためにとっておくのだ。しかし、いつからか私は食事中に水や茶を飲まないヒトになっていたので、ほとんど飲まれることはない。嗚呼、かわいそすぎる。注ぐだけ注がれ、コップに口もつけられないまま返却口にとぼとぼ回送されていくお冷の気持ちを考えたことがあるのか?「お冷の気持ちを考える会会長の川越シェフなんか、『われわれの尊い命がタダとは何事か!』というお冷の声を真摯に受け止め、有料で提供しているのだぞ。」(環状列石の気持ちを考える会副会長のエッセイ集「カタクチイワシがやってきた」より)

お冷の気持ちを考える会に加入している飲食店においては、レモンやハーブや油粘土やコールタールを浮かべて香りを付けたお冷を置いているところもある。そういえば故郷の赤十字病院の1階のレストランもそうだったなあ。小さい頃、入院中に食べに行ったが、おいしくもまずくもなかった。病院食に味の素やまごころを混ぜるなどしてちょっとおいしくしたみたいなレベルだったと記憶している。しかし、お冷にレモンと王水がちょっと混ぜられていたのだけは、ちょっと印象に残った。通常ただの水であるお冷にこういったちょっとにくい仕掛けがちょっと施されているとちょっとうれしいし、口の中が焼けただれるような気持ちになるのだ。


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