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『Dead-End Apartment』のはなし

こんばんは。深瀬佑と申します。


lasahさん(@lasah_ichijo)×Lemmさん(@lemm_sounds)による楽曲「Dead-End Apartment」をお借りして、eau.さんと一緒に映像を制作した過程を綴ります。


※本映像は深瀬佑とeau.が自主制作したものであり、あくまで非公式の解釈であることをご承知ください。



①全体の流れ

前の冬にeau.さんの実家が火事で全焼してしまったことをきっかけに、この曲で映像を制作してFRENZに出たいと提案されました。初めて聴かせてもらったときに私も一目惚れし、制作に踏み切りました。


まずeau.さんに楽曲の音の変化に合わせてシーンの切替を作ってもらいました。

その後、この楽曲のテーマや伝えたいことを深瀬が勘案して、歌詞解釈を考え、シーンの切替にハマるようにコンテを作ります。

コンテが出来たあとは各自それに沿って手を動かして完成です。お盆直前くらいに作業を始めたので、実際の作業時間は二人とも一ヵ月弱くらいです。

作業分担は下記の通りです。

eau.…選曲、シーン切替、3D、歌詞モーション、コンポジット

深瀬…歌詞解釈、構成・コンテ、アニメーション、Live2D、3Dテクスチャ一部

文面だと二人の作業が明確に切り分けられているように見えると思いますが、ひとつ屋根の下に暮らしている利点を活かし、都度打ち合わせしながら進めていました。


次項から深瀬が担当した範囲の解説をします。



②テーマの設定、歌詞解釈、演出

この曲が収録されているアルバムは、取り壊しが決まった古いアパートに暮らす住人それぞれの終わりを描いたものです。

まずはアルバムを全曲聴いて歌詞を読んで、トレーラーを観て、素敵なジャケットのアートワークを眺め回し、全ての公式情報を得ます。

そうやって2日ほど曲に身を任せていると、
だんだんストーリーやキャラクターが浮かんで、
それをえいやと再構築すると、
コンテが完成します。




実際本当にこんな感じです。
感覚的ですみません。


これで解説を終わるわけにもいかないので、映像が完成した後で今さらですが、制作過程をがんばって言語化していきます。



まずはアルバム全体の解釈から。

公式には

「木造、築三十年、日当たりの悪い北向き。
そのアパートは、緩やかな坂道を上った先にあるT字路を右に曲がると、姿を現した。」

「デッドエンド・アパートメント」トレーラーの説明文より

という記述があります。

築三十年の日当たりが良くないアパートとのことなので、家賃はそんなに高くない、独り身でお金に余裕があるわけではない人が住んでいるのかなと想像します。

同じ人が三十年そこに住み続けていることは考えにくく、学生や働き始めて数年の社会人が入れ代わり立ち代わり集まっていると考えられます。(これは各曲の歌詞から明確に分かります。)

また、このアパートは閑散とした場所にあるように思えます。住人それぞれが狭くとも一国一城の主として自分に閉じた空間で生活していて、歌詞の中でも外部から干渉されている様子がほぼ無いです。

そして、アパートが取り壊されるということは、必ず次に住む場所に引っ越すということで、そこは映像に不可欠な要素となります。


このあたりまでアルバムを解釈した時点で大枠のストーリーや主人公のパーソナリティが決まったので、歌詞解釈に進みます。

一部抜粋しました。

制作時は歌詞だけでなく歌い方、曲の流れ、
その他色々を材料に解釈しているので言語化していません。


(あくまで私の解釈なので非公式です)
(間違ってたら恥ずかしい)


これらのような解釈を経てストーリーが細部まで決まりました。
一応アルバムに収録されたDead-End Apartment以外の曲で描かれている住人も全部解釈して人物像を想定してあります。


また、観てくださった方に「寂しい」「前を向いて進んでいきたい」「なんとなく暖かい気持ちになる」と思ってほしいので、そのように感じてもらえるような演出を色々施しています。

主人公の扱い方もその一つです。
主人公をキャラクターとして確立させても良かったんですが、なるべく視聴者さんに自分事として受け取ってもらいたく、今回は匿名(≒顔を出さない)にしました。キャラクター化するとそのキャラクターのストーリーになってしまうので。



ストーリーやキャラクターは、こんな感じでもちゃもちゃ考えています。


ストーリーが出来たら、
時間軸を入れ替えたりインサートを挟んだりして飽きない構成を考えて、
各シーンでどれだけの量のどういう情報を視聴者さんに伝えればストーリーが伝わるか計画します。

それを元にeau.さんに作ってもらったシーンの切替や音の雰囲気に合うように調整してコンテが完成します。

字コンテ記入用のエクセル
左の秒数や歌詞の切れ目はeau.さんが、右は深瀬が書いてます。
制作中に文字に起こしたのはこのシートだけです。


音にシーンを合わせてもストーリーが成立するように構成を考える過程が映像制作で一番楽しいです。全行程の中で一番向いてる気がするので、一生この作業だけやっていたいくらいです。

各シーンの情報量は、シート左の秒数で尺を見つつ、視聴者さんの情緒を想像しながらハンドリングしています。
この作業は演劇を作っていた時に考えていたことと非常に近いものがあります。



長々と書きましたが
こんな感じで、なんやかんやコンテが出来ました!



③キャラクター

映像に登場するふわふわしたピンクの大きい何かのことを、制作中は「家概念さん」と呼んでいたのでそう表記します。

家や場を具現化した概念的な存在だと思ってください。

撮影時に色が飛ばないよう、原画は暗めに描いています

家概念さんの身体は全部レイヤー分けしてLive2Dで動かしています。多分全部で90枚くらい。

なんの参考にもならないと思いますが物理演算のパラメータを貼っておきます。

自分にしか理解できないネーミングになってもうた

各パーツに2-3段の揺れをモデリングし、物理演算の入力にタイミングを数フレームずらした呼吸パラメータを複数入れてふわふわ感を表現しました。

全ての揺れが同期して作り物感が強くなってしまう(Live2Dあるある)のを避けるためです。



家概念さんのデザインは、eau.さんの焼失した実家を訪れた時に感じたことを元に考えました。

外から室内が見えるくらい、2階の右側の壁が焼け落ちていたことを顔に反映しました。

すごく大きな火事だったのに家の真横に生えていた木は生き残っていて、それなのに家は見るに堪えない状態になっていて、そこから髪をヒビでできた桜のようにしました。あとは焼け残った服やガラス片やカーテン。


もちろん現実の家は真っ黒に焼けてずっと煙の匂いがして、家概念さんみたいなふわふわした存在では決してなかったです。

元々はブリキの錆びた人形のようなデザインで考えていましたが、そうやって直接的に描くのは我々のやりたいことではないし曲に合わないなと思ってやめました。包容力のある大きいお姉さん系人外、良いですよね。


テクスチャを大量に重ねたような質感にしたのはeau.さんの得意な作風と合わせるためです。深瀬は絵柄が可変なのでこういうとき便利です。


ラストの抱きしめるシーンやバラバラになっていくシーンもLive2Dゴリ押しで作っています。

ゴリ押しの様子

揺れの子デフォーマを維持したまま、親デフォーマを追加してアニメーションを設定して、Live2Dでキーフレームを打っています。
普通にVtuberのモデルを作る時には絶対にありえないモデリングができて面白かったです。



④おまけ


3Dテクスチャのうち、手書きの文字や本のデザインは深瀬が作っています。

手書きの筆跡は普段の私の字ではないです。
うーんと念じると主人公が手に降りてきて、主人公の字で主人公が書きたいことが書けるようになるので、その状態で書きました。(降霊術?)


右上の締切日時は
FRENZへの愛を込めて同日にしました
後半になるにつれて字が汚くなっていくイメージで
崩して書いています

こういう内容の作品に手書きフォントを使うのは絶対にダメなので全部書きましたが、数日ずっと文字だけ書いていたので(今なんの作業してるんだっけ…?)と混乱していました。

初めての3Dのテクスチャ制作はなかなか面白かったです。

いつか自力で3Dモデリングやアニメーションも出来るようになれたらいいなと思っています。




以上メイキングです。 
ここまで読んでくださってありがとうございます。

あらためて楽曲を制作してくださったlasahさん、Lemmさん
素敵なアルバムやトレーラーを作ってくださったサイトウユウマさん
本当にありがとうございました!


アルバムのトレーラーのご紹介。


深瀬がこれまで作った映像も何卒よろしくお願いします。



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