行列のできる断崖絶壁

 和歌山県白浜町の三段壁はその雄大な風景もさることながら、自殺の名所としても名高い。太平洋に張り出した断崖絶壁に荒波がぶつかる。波の浸食により断崖の内部に洞窟ができるほどだ。飛び降りると死体は二度と浮かび上がってこないと言う。

 観光客はまず、JRきのくに線白浜駅に降り立つ。お金や時間に余裕があれば、白浜温泉につかったり、アドベンチャー・ワールドで子パンダを見るのも良い。白浜駅から三段壁行きのバスが出ている。まず迷うことはない。特に月曜日のバスはスーツ姿のサラリーマンで一杯になる。早めにバス停に並んでおこう。

 バス停三段壁で下車し、案内板に沿って二分進む。ここで飛び込み用チケット(大人千五百円)を買おう。コーヒー無料券が付いているのでコンコースで一休みするのもお勧めだ。景勝を見ながら世辞の句を考えられる。

 海の香りを楽しみながら、三段壁の突端まで歩いてみよう。白線で区切られた素っ気ないレーンが三つある。受付でチケットを切ってもらい、レーンに並ぶ。自分の番が来たら靴を脱いで、スタッフに遺書を手渡す(靴と荷物は遺言に沿ってきちんと処分してくれる)。列がつっかえないように手早く飛び込もう。足が竦んでも無料の背中押しサービスがあるから心配はいらない。

 三段壁観光協会お勧めの飛び込み方は「チャーシューメン」だ。チャーで両手を前方に振り、シューで膝を曲げながら後方に手を振って、メンでジャンプする。今年は4月の来場者だけで3万人を越えたという。大盛況だ。

#逆噴射プラクティス

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