菜園相撲

 ほどよく耕された土俵で巨体がぶつかりあった。桜島関の手にはタキイ種苗の耐病総太り青首ダイコンの種、金町関の手にはサカタの種の紅小カブの種。両者とも定石通りだがスタイルは真逆だ。

 桜島関は重量を活かし、金町関を突き出さんと両手突っ張り。種を三点撒きにする。黒マルチの穴に適確に三粒ずつ、そして遅効性IB肥料の基肥。重く、そして精密な攻めだ。

 一方、金町関は素早さを活かして桜島関をかわし、条蒔きにする。間引きの手間はかかるが良い芽を残しやすい。そして米糠一発元肥。根菜にはやや不自然だ。策ありと見える。土俵際からのうっちゃり葉面散布か。

 いや、金町関は桜島関の手を掴み後方へねじった。網打ちだ! 同時に不織布が畝にトンネルを作る。適度に温度が保たれ初期生育が加速する!桜島関が派手に土俵の外へ飛んだ!
 
 相撲部の面々はTVを前に沈黙している。未だ有機JASすらままならぬ彼らは三日後、金町関を相手に戦わねばならないのだ。

【続く】


#逆噴射プラクティス #逆噴射小説大賞

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?