愛国スイッチ

 超音波や電磁波を利用して脳の特定部位の活性化させる非侵襲的脳刺激デバイスの開発過程において偶然生まれてしまったもの、それが通称、愛国スイッチである。

 被験者にこの何だかゴワゴワした帽子のようなものを被らせ、頭頂部のボタンを押す。するとこのデバイスは脳をスキャンし、バグまみれのコードに従って脳の特定ユニットを刺激していく。処置は約1秒で完了する。

 被験者がもともと持つ思想に関わらず、少数者、被差別者への軽蔑が植え付けられる。自分が所属している集団や民族が非常に優れていると思い込む。マジョリティは逆差別を受け迫害されていると感じる。愛国者になる。

 興味深いことに、ボタンを押す回数を増やすほどナショナリズムと全体主義への傾倒が強くなる。押しすぎると狂人になる。10回ほど押すとハイル・ヒットラーと叫びだす。

 スイッチは諸国からひっぱりだこになり、量産体制が敷かれた。ボタンは連続9回までに限られる仕様である。

【続く】

#逆噴射プラクティス #逆噴射小説大賞

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