国立代替医療院救命救急科

 代替医師は息子の額から冷却シートを剥がしてキャベツを巻き付けた。「安心してください、自然のアルカリ性が熱の酸性を中和してくれます」
 力強い言葉に妻は安心したようだった。

 事の起こりは息子の突然の高熱だった。深夜のことで開いている病院はあるはずもなく、救急車を呼んだ。救急隊員はまず「正規医療院にするか、代替医療院にするか」を問うた。正規医療は金がかかりすぎて手が出ない。幸い、代替医療には国の補助がつく上にネット上での評判が良い。

 妻と私は迷わず代替医療院を選んだ。私も妻も国立の大学でビジネスマナーを専攻していた。医療は専門外だ。

「ストレスで体内の活性酸素が増え過ぎたんです。水素水を点滴します」

 適確な処置により息子の熱は数時間で落ち着いた。私達は天に感謝した。隣室からはすすり泣きが聞こえていた。

 帰り際に、ヒアルロン酸コラーゲン錠とパワーストーン、有用微生物付き無農薬キャベツが処方された。

【続く】

#逆噴射プラクティス #逆噴射小説大賞

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?