エキュメノポリス

 なぜ皆、太陽も星も偽物だと気が付かないのだろうか。風雨や稲妻さえも本物ではない。緑に溢れる風景も地平線の先まで作り物だ。

 最下層の貧民街に入ればよく分かる。ホログラムが途切れ本当の世界が姿を現す。日光など存在しないコンクリートの檻。非市民はこの古びた工場のような空間で電燈を頼りに生活する。

 吹き抜けの周囲には金属屑やカーボンファイバー合板端材を寄せ集めた住居が集中している。見上げれば無限に続く巨大パイプ群に家々がまとわりつき重なり合う。足元を覗き込んでも同じ光景が続く。

 半径200km、高さ20kmの構造物。このポリスの正体だ。
 
大昔に月に行った支配層に代わってAIが支配している。市民階級制度、愚民政策、徹底的監視。一方、労働は機械が代行し市民票さえ持っていれば生活には困らない。
 
 私は無為な怠惰を貪る為に危険を犯して市民になったのではない。塔の全住民を巻き込んでもポリス全体を灰に還す。ただのルサンチマン故に。

【続く】

#逆噴射プラクティス #逆噴射小説大賞

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