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ディジタル書斎7 情報融合

様々な情報を構造化して知に変える
生物の進化論は、生存と繁殖に本質的に関わりがある情報を感受し、これを短時間に処理し、適切な行動や反応に結び付けた個体、種が生き延びる、という事です。企業、そして人間、コミュニティーおいてもこれは同じでしょう。
また人間には、心理的な面から情報に関して3つの欲求があるといわれています。1つは情報を生み出すこと。2つ目は他のグループや人に伝えること。3つ目は情報の意味を理解すること。この内、情報を生み出すことすなわち創造が最高位の知的活動ではないでしょうか。
頭の中の情報処理の結果を何か外に表現したいという欲求が、古代人に洞窟画を描かせ、言葉を用いて、詩や小説を、そして又絵画や彫刻を造り出したのでしょう。
人間が行動から得ている情報は、目からはいるものを中心に膨大な量にのぼりますが、そのごく一部が脳の中に認識した情報として記憶されます。全て無意識下に記憶されているという説もあります。しかし認識できた情報もその存在すら多くは意識から失われ、必要な時に想起できないのが現実です。
一方、ある触媒的な刺激やプロセスにより脳の中でその組合せと連合がさかんに行われ、新しい意味付けがされ、構造化された時それは閃きとなり、アイディアとなります。この現象とそのプロセスの能動的な始動を、私は「情報融合」と名付けました。これを積極的に意識するとアイディアが出やすくなります。

情報融合とは
情報融合の手法の一つは、関連する情報を濃縮することです。この情報融合のテクニックはすでにテクニックとして意識しないで使われています。例えば創造的な仕事をする人は大きな机を使っています。資料の一覧性が重要ですから。プロジェクトルームを設営して資料などは壁に張る、情報を1枚にまとめるなどもしますね。情報の一覧性です。
パソコンのディスプレイも、一つの画面の中に複数情報を持ってくると新しい何かが見えてきます。ですから大きなディスプレイや複数のディスプレイが知的作業には有効です。また学会誌はあるテーマについて特集を組みますが、その時解説論文が巻頭にあります。その著者が優れていれば、それ自体が素晴らしい情報の濃縮になっています。ただ難点はその著者の色に染まっていることがあることですが。
十八史略は文字通り18の史書を要約したものです。すなわち「史記」に始まり「漢書」「後漢書」「三国誌」等々・・・「宋史」に終わる18の史書を一つにまとめ、多分科挙という官吏登用試験の受験生の為に編纂されたもので、膨大なる史書をぐっと情報圧縮したものです。現代の私はそのまたダイジェスト版を読んでいますが。その十八史略に収録された故事、成語、名言は中国幾千年の知恵を濃縮したものでしょう。ですから漢字四文字の格言に我々は心打たれるわけです。話が飛躍しますが、十八史略が教える漢の劉邦の成功の要因は、部下の諫言を聞き、そして生の情報を自分で収集していたからだといわれています。劉邦はリアルタイムの情報にも強かったようです。そして十八史略が教える失敗の条件は「偽」「私」「放」「奢」の四つです。
他にもいろいろ情報融合の手法はあります。たとえば、まとめて雑誌を読むことです。私など雑誌が月に幾冊も届き未読のまま溜まりがちですが、雑誌によってはわざと溜める場合もあります。一年分12冊を一気に読むのです。バラバラ読んでいるよりは1月号から12月号までパッと読むと、あるものが見えてきます。俯瞰的な理解が出来ます。1年分まとめて読むと大半の話題が実は小さな事、末梢的な事でただそれだけの話題が多いことに気が付きます。連載記事も1つずつ読むよりはまとめて読んだほうが俯瞰的な理解は深まります。技術の本流は意外とゆっくり社会を変革しつつあります。俯瞰的理解からこれが見えてきます。
今日ではインターネットのweb情報をうまく検索すると特定のテーマの情報が得られますが,それを知識として濃縮するにはかなりの選択・識別・評価能力が必要です。

頭の中に情報のフォルダーを持つ
情報そのものは頭の中から涌いてくるものではありません。外から取り入れられた情報が融合して、あたかも自分のアイディアとして出てくるのです。
私達は情報洪水の中に生きています。ただ、その溢れるばかりの情報を獲得するには、頭の中に情報収納の枠組を用意する必要があります。まず、自分自身の興味と必要な情報を強く認識していることが重要です。そうすると脳の中にテーマを付けたファイルフォルダーが用意されます。するとテレビ、新聞、雑誌、書籍、会話、会議そしてwebなど日常活動のなかで得られる関連する価値ある情報に対する感度が高まり、
関連情報に対する気付きが多くなります。独自の関心で設定したフォルダーを脳の中に持つことで情報洪水の中から有用な情報を効率的に収集できます。新聞や雑誌をめくっていても記事のほうから声を掛けて来る感じです。本や原稿を書こうとして準備している期間はこの頭の中の関連項目のフォルダーがきちっと用意されているので、驚くほどインターネット、新聞や雑誌やテレビからの情報が生き生きと入って来るのを実感します。出会った情報は速やかにリアルのフォルダーに収納します。今は良いevernoteようなソフトウェアが利用できます。
知識の獲得には自身が追及するものを意識することが凄く大切です。

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