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ディジタル書斎8 情報を知識に変える

情報を知識に変える作業
情報と知識の定義はいくつもありますが、このコラムでは、事象に関する生の記述を
「情報」と呼び、その情報に意味づけや関係性を持たせた記述を「知識」と呼ぶことにします。「記述」とは言語的または図形的な表象とします。画像や動画から人は知識を獲得できますが、その画像や動画そのものは「情報」としておきます。
私達は情報の洪水の中に生きています。ただ、その溢れるばかりの情報から自分にとって有効な情報を獲得するには、頭の中に情報収納の枠組を用意する必要があります。まず、自分自身の興味と必要な情報を強く認識していることが重要です。そうすると脳の中にテーマを付けたファイルフォルダーが用意されます。するとテレビ、新聞、雑誌、書籍、会話、会議そしてwebの中の価値ある関連情報に対する感度が高まります。独自の関心で設定したフォルダーを脳の中に持つことで情報洪水の中から有用な情報を効率的に収集できます。新聞や雑誌をめくっていても記事のほうから声を掛けて来る感じです。本や原稿を書こうとして準備している期間はこの頭の中の関連項目のフォルダーがきちっと用意されているので、驚くほどインターネット、新聞や雑誌やテレビからの情報が生き生きと入って来るのを実感します。出会った情報は速やかにリアルのフォルダーに収納します。今はEvernoteのようなソフトウェアが利用できます。
ただそのまま放っておいても知識になることはありません。いつしか消えてくるだけです。頭の中のフォルダーは情報をせき止めているだけです。ですからある程度溜まったら中を分析整理して構造化する作業が必要です。この作業で情報が知識に変換され、脳の中に応用可能な状態で長期保存されます。あくまで私の認識ですが。
特に雑誌や新聞の情報は日々のニュースを追っているため時間とともに流れているだけです。加えて1つのテーマについて複数の視点で報道されます。ですから、あるところでせき止められた情報を分析して自分の認識という知識に変える必要があります。特に最近はニュースもネットでの情報が多く、きちっとしたメディアの情報でないため結果的に偽ニュースもあります。ますます自分で情報を分析・編集する能力が重要になっています。
私は、極力ニュースはデジタル情報で収集し、 Evernoteというソフトウェアに収納しておきます。そして月に1度くらい特定のテーマについて全体を俯瞰的に読み、補足すべき情報を再収集し、編集して、俯瞰工学研究所の俯瞰メールマガジンという形で発信しています。情報発信のために作業しているわけではなく自分自身のためです。それをメールマガジンの読者と共有しているわけです。ご興味ある方は俯瞰工学研究所のホームページの右上から申し込んでください。
きちんとした書籍はすでに著者が情報を構造化して知識に変換してありますから直接知識を獲得することができますが、ただ流し読みでは知識として獲得できない可能性があります。断片的な情報の収集になってしまうでしょう。とするともう一度知識に変換しなければなりません。たくさんの本を読んでいてもアウトプットが少ない人がいます。知識を獲得するためには精読が必要です。私は蛍光ペンを持って読書し、知識として獲得すべき部分はマークします。脳にこれは知識だと言うメッセージを送る気持ちです。内容の要約をします。加えて先に述べたメールマガジン「俯瞰の書棚から」に書きます。書評の部分はわずかで要約が大部分です。これも書籍から得られた知識を脳に固定するためです。
知識を自分の脳に固定する方法はいくつかあるでしょう。そのことを人に話すと脳に固定することができると思います。口に出して言ってみる、これが効くようです。ノートに書き留めておいてもそのノートをいつ見るのでしょうか。ましてや紙のノートでは検索ができませんからほとんど再利用されていないでしょう。ただ大学受験で作るような整理されたノートを作れば、それを繰り返しに見ることで強く知識が固定される事は多くの方が体験済みです。
講演のためにプレゼンテーションを作りますが、これは強力な情報の分析・編集作業になります。特定のテーマに沿った情報を集めます。収集しておいた情報もこの時活用できます。 Evernoteに収納されている情報はGoogleの検索でもひっかかります。プレゼンテーションは図表やグラフを使いますから、数字も頭に入ります。プレゼンテーションの作成は実に、情報の収集、分析、編集と言う知的作業です。
私は東京大学の俯瞰経営塾というゼミで、このゼミの目的は知識の獲得ではなく知的腕力の研鑽だと言います。知的腕力とは何か、それは情報の収集・分析・編集を高い水準で、短時間に処理する能力であると言います。もう10年以上続けていますが2か月もすると驚くほどの知的椀力をつけます。そして社会に出てから、身につけた知的腕力が役立ちましたというフィードバックをもらうと嬉しいですね。

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