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私がパイロットデンチャーシステムで義歯を作り続ける理由1)

義歯(入れ歯)作りは本当に奥の深い作業です。患者さんは義歯を使ってらっしゃる時点で何年も歯医者に通い続けています。

歯医者より歯医者歴が長い方が大勢いるのです。

私は10年以上もの間、大学病院で学生に教えたり研修医の指導に当たったり、もちろん、患者さんの治療にも全身全霊を傾けておりました。

自慢するわけではありませんが大学病院では教授より腕が良いと言われることもあり、自分なりに評価されて手ごたえも感じていたのは事実です。それはお世辞だと分かっていましたよ。腕が良いと言われたからと言って女性にモテることはありませんでしたし、お金が儲かることもありませんでしたから、仮に私が歯科医師として腕が良かったとしても、技術と興隆は無縁だと断言できます。それはともかく、大学病院時代に、総義歯(総入れ歯)治療に関しては、ほぼ100点を極め、充実した毎日を送っていると感じていました。

それが変化したのは親父に継いで開業医になってからでした。

私に大学病院の肩書きがあろうがなかろうが、入れ歯が痛いもんは痛い、緩いもんは緩い、忌憚なく訴えられ、当たり前ですが、普通に開業医になった先生方と同じ悩みに面したのです。私が感じていた100点は下駄が履かされていたのか? 大学での義歯作りは臨床では通用しないのか?

ここで用語のワンポイント解説をします

臨床とは

私たちはまず「座学」として教科書で病気や障害に関して教わります。その後、それが実際に患者さんの体がどうなっているかを画像や動画で教わります。模型を使って治療のまねごとを教わり、同級生同士で試してみたり、親兄弟に頼んで触らせてもらったりして病院実習を迎えます。それが「臨床実習」すなわち実際に患者さんの体を治療することを「臨床」と呼ぶのです。

大学病院で治療するのも開業医で治療するのも「臨床」に変わりありません。違うのは「意識」です。我々は大学病院での治療には疑問を持たず(そのつもりはないのですが)、患者さんは大学病院に特別な設備や技術に裏打ちされた大学にしかできないパフォーマンスを求めます。

正しい臨床とは何かを求める旅が始まる

大学病院時代の患者さんは開業先にも通ってくださり、私自身の仕事のやり方を変えてはいませんでした。それでも頭から離れない「本当に正しいのだろうか」という疑念。100点と思っていたのは一体何点なのだろうか?教科書は間違ってはいないはずだ。

その時気付かなかったのですが、今までのやり方が正しいのか間違っているのか悩むなんて、臨床ではないのです。向き合っているのは己の過去であり患者さんを診ていないのですから。




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