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私がパイロットデンチャーシステムで義歯を作る理由5)

何度も出てくる『パイロットデンチャーシステムで義歯を作る』って、いったい何なの?とお感じのことと思います。まず普通は義歯(入れ歯)を使ったことがある方が少ないことでしょう。

一般的な歯の治療と同じく、義歯(入れ歯)作りにも正しい順番があります。①型取り ②咬み合わせチェック ③完成 ④調整

ステップは4段階しかありませんが、それぞれそれはもう難儀な技です。細かいことや技術的なことは、追い追い歯科医師向けに何かしら語れる機会があれば良いなと考えております。これは患者さんも読んで下さるかもしれないので掻い摘んでご説明させて頂きます。

パイロットデンチャーの作り方

パイロットデンチャーシステムでの義歯の作り方は ①ひとつ義歯を作る ②痛いところをなくす ③仕上げる の3段階です。


この中で、一番時間をかけるのが②の段階です。痛みをとりながら、全体の形をひとりひとりに合わせて、大きすぎず小さすぎず、高すぎず低すぎず、浮きすぎず沈みすぎず、の按配を調整するのです。

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この写真をご覧になって、何か違うぞ、板みたいな平らなブロックがはめ込まれているなと、お判りいただけましたでしょうか?パイロットデンチャーのパイロットには、『水先案内』とか『先行試作』という意味があります。初めに『先行試作』として幾らでも調整可能な義歯を作り、患者さんに数か月の間、普段通りに生活して頂くと、この平らな面に、圧痕がついてきます。初めはどこで食事を噛んでよいか不安定な患者さんも、だんだん1か所で噛めるようになり、1か所で噛めるようになると力がグッと掛けられるようになり、平らなブロックが凹んでくるのです。

その凹みが患者さんにとって1番安定する場所です。凹みに合わせて最終的な人工歯を並べ替えて完成です。

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この写真は、最後にブロックを奥歯の人工歯に並べ替えたところです。

ただ、並べ替えるだけではありません。全体を作り変えるので、初めに作った義歯は手元に残ります。

歯を治すと言うけれど......

歯の治療や義歯(入れ歯)製作は1本なり1個なり、個別に行うことが普通ではあります。でも、大事なことは、お口ひとつが1個の臓器と考えてもらいたいということです。

たまたま虫歯が1か所できた➡治そう......それは間違っていません。

その虫歯は単独で存在してるわけではなく、上下左右28本の中のたまたま1本だっただけで、口という臓器の中の1本で、理由があって虫歯になったのです。

総義歯(総入れ歯)の患者さんはその28本すべてを失った状態です。そこに至るまで28通りの事情があり歴史があるのです。周りの組織にその歴史が蓄積されていることを詳らかにしながら、元々の機能を回復させていく、その作業に、数か月お付き合いを頂くのがパイロットデンチャーシステムなのです。

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