花留多唄【み】ミヤコワスレ
『都忘れ』という名は承久の乱で佐渡へ流された順徳天皇がこの花を見ると都への想いを忘れられそうだと語ったことからだとされています。花言葉の『別れ』『しばしの憩い』とあるのはそのせいでしょうか。
この花は上品で控えめな紫色をしており、なんとも清楚な姿です。こんな色の着物が似合う女性はしなやかでひっそりとした美しさだろうと思わせます。花言葉のひとつに『穏やかさ』というのがあるんですが、まさにその言葉のような女性に似合いそうです。
さて、都忘れは梨木香歩さんの小説『家守綺譚』に登場します。ゴローという犬が主人公の家に居つく章のタイトルが『ミヤコワスレ』なのです。
主人公の友人であり、今は幽霊となった男が子どもの頃に可愛がっていた犬の名前をつけてやるくだりです。短い章ながらもどこか切ない余韻が胸をふさぎ、次の章にすすまずにもう少し思いを馳せていたくなるのです。花言葉の『また会う日まで』が似合うような気もします。
また都忘れには『強い意志』『短い恋』という花言葉もあります。大人しそうな姿の裏にそういう気性が隠れているかと思うと、ますますもって魅力的だなと思うのです。
文字札:道をたがえど想いはそこに
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