【レビュー】『NieR:Automata』胃もたれ寸前オタクの好きな奴全部盛り【ネタバレ無し】
2017年発売、スクウェア・エニックス、プラチナゲームズ共同開発によるシリーズ最新作。
ジャンルとしてはシューティング要素を含んだアクションRPG。
PlayStation4、Steam、Xbox One、そして2022年10月からはswitchと主要機種全てで遊ぶことができるようになりました。
前作「NieR Replicant」から実に7年振りの新作であり、舞台化や漫画化、最近ではTVアニメ化やswitchへの移植など多方面への展開を続けています。
かつて展開されていた「ドラッグオンドラグーン」シリーズの精神的続編という性質も備えていて、ヨコオタロウ氏を始めとした同シリーズの制作陣が開発に携わっているとのこと。
なお、世界観は前作から地続きではあるものの、本作から遊んでも全く問題はありませんのでその点はご心配なく。
筆者はPlaystation版をプレイ。
「オタクが好きな奴」を堂々とやりきっている
特にキャラクター作りにおいて、主人公2Bを筆頭に良くも悪くもオタク好みな味付けがされてるなという印象が強いです。
もともと私は2Bに対して「クール系銀髪日本刀目隠しアンドロイド美少女っていくらなんでも属性盛りすぎだしオタクに媚びすぎだろ」とか失礼な事を思ってたんですが、非常に丁寧な心情描写によって決して媚びただけのキャラにはなっておらず、絶大な人気を得ているのも納得。(でもやっぱり属性は盛りすぎ)
無感情な美少女が様々なアンドロイドや機械生命体と触れ合うことで次第に感情をあらわにしていく展開は王道でいいですね。
そうしたキャラクター達に対して、過酷な運命を背負わせるというのもまた「オタクが好きな奴」を全力で狙ってきており、清々しくて好感が持てました。
勿論彼女以外にもクセは強めですがそれ故に印象に残るキャラばかり。
抵抗感を感じる方もいるとは思いますが、好きな人にはたまらない味付けになっています。
アクションRPGとしての完成度は抜群
箱庭マップと思わせといて2D3Dが切り替わる、シューティングステージがあるなど変化に富んだステージ構成で退屈しない作りになっており、クリアまでに飽きることもまずないのではないかと思います。
またプラチナゲームズらしいハイスピードなアクションとスクウェアエニックスの十八番であるRPG要素がバッチリハマっていて、非常に軽快なアクションを楽しめ、やりがいの面でも良く出来ています。
浮遊する剣を使った独特の攻撃アクションは少しばかり慣れを要しますが、本作ならではの個性が溢れていて面白かったですね。
加えて細かいところですが、UIにおける様々なゲージやミニマップなどをスキル化したのが新鮮で面白く感じました。
基本オンにはなってるのですがオフにすることで多少スキルに必要なコストを節約出来るというもの。
余計な機能を切る事で容量削減に繋がるという、主人公達がアンドロイドである事を印象付ける良い表現だったと思います。
総じてゲーム性の部分は非常にクオリティが高いです。
最大の特徴であるシナリオについては疑問
設定周りやシナリオは良くも悪くもニーアらしいという感じで、2B達アンドロイドと敵である機械生命体の違い、自我なのかプログラムなのか、命や心といったテーマをエグさを伴った描写で表現しています。
ただ個人的にはちょっと悲劇的展開に頼り過ぎではと。都合良く不幸が起こり過ぎてる印象が否めなかったです。(ネタバレの塊なので具体例が出せないのが心苦しいですが)
そうした「滅びの運命」みたいなものがあるからこそ、あのラストシーンに繋がっているのは理解は出来るんですけど、私は結局そのラストまで含めて感情移入できなかったし面白いとは思えませんでした。
またメタ要素を多用しすぎて失敗している節があります。
これは私見ですが、メタフィクションは「プレイヤーの意表を突けるか」と「プレイヤーを納得させられるか」という二つの要素が揃わないとただ滑稽になってしまう非常に難しい表現だと思っています。
本作の場合序盤のころは良かったのですが、だんだん意表が突けなくなってくることで「でもどうせ〇〇なんでしょ?」と冷めた目で見るようになっていき、実際その予想通りの展開になってしまうのでがっかりしてしまいました。
ただ、この点については2017年当時に遊んだプレイヤーと、近年のゲーム業界におけるメタフィクションブームで、あらゆるメタ表現がやり尽くされつつある2023年現在に遊んだ筆者では意見が変わってくる部分なのかもしれませんね。
その他細かい不満点
小さな部分ですが、不満点を列挙しておくと
・ファストトラベルの解放が妙に遅い
・オープニングステージでセーブの機会が全く無い
この二点が少々気になりました。
一点目についてはレベリングやサブクエストの進行でずっと不便に感じたまま進めていき、そうした不便さにやっと慣れてきたころに解放されました。
フィールドを楽しんでほしいという意図なのかもしれませんが、あのめんどくさいお使いクエストで長距離移動を繰り返させられた時間を返して欲しいというのが正直な感想。
二点目についてはよりにもよってオープニングステージというのが辛い。
本作は結構難易度が高いし、操作に慣れてない最序盤でいきなりセーブ不可はハードルが高すぎる。
しかも倒されると冒頭の飛ばせないムービーからスタートするのでリトライにも時間がかかるというおまけ付き。
まあゲーマー向けの傾向が強い作品なのでいいのかもしれませんが、中々ライトユーザーには厳しい仕様に思います。
要点まとめ
良い点
清々しいほどオタク好みに振り切ったキャラクター、設定
飽きさせないステージ構成
プラチナゲームズ謹製のアクションとスクエニお得意のRPGがハイレベルに融合している
悪い点
悲劇に頼りすぎ、慣れや飽きがきてしまうシナリオ
ファストトラベルの解禁やオープニングステージのセーブに関する仕様など不親切な仕様がところどころ目立つ
総評
ゲームとしては面白いです。
それは間違いないのですが、シナリオがやはりどうにも・・・逆ご都合主義とでも言いましょうか、やること成すこと全て悲劇に繋がっていくのでうんざりしてしまいました。
一言で言えば私には合わなかったんでしょう。
ただ、それでも私がクリアまで遊べた事こそ本作が良作である何よりの証明だと思います。
個性が強いので良くも悪くも人を選ぶタイトルですが、それだけに合う人には一生モノのゲームに成り得るポテンシャルがあると思います。
実際プレイしていても好きな人は好きなんだろうなと思うポイントはたくさんあったので、合わない側だった私にも人気の理由は理解できました。
前身のドラッグオンドラグーンの時点で相当人を選ぶタイトルでしたし、万人受けしないのは当然と言えば当然なのかもしれませんね。
ただ勘違いしてほしくないのは人を選ぶのはあくまでシナリオ面の話であって、ゲーム性は間違いなく誰が評価しても良いと言えるものです。
少なくとも遊んだことを後悔することはないでしょう。
評価・・・8 - GREAT(素晴らしい)/10
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