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藤沢周平の「蝉しぐれ」を読んだ。

 「蝉しぐれ」は藤沢周平の代表作のひとつ。時代青春小説だ。
 いつもは主人公に剣豪が出てくるが、物語が始まったとき、牧文四郎の年齢はまだ15歳。道場に通って稽古をつけてもらう身の上。父は28石取りの侍。大きな家ではない。
 文四郎にはふたりの友人がおり、また、おふくという幼なじみの女の子がいる。
 この四人の運命が変転していく物語である。
 父親の助左衛門が、お世継ぎをめぐる政争にまきこまれて突然切腹させられる。お家断絶とはならなかったが、家禄を減らされた上、小さな長屋に引っ越すことになる。周囲の目も冷たくなる。一方、おふくは殿様のお手がつき、奥に入る。
 文四郎は剣技に打ち込み、ついには師に秘剣村雨を伝受されるまでになる。このことが、おふくを助けにいく終盤のクライマックスにつながっていく。
 ようやく小説を読み終えたので、映画「蝉しぐれ」を観たが、道場の件や人間関係をばっさり削っているので、終盤の斬り合いが絵空事に思え、あまり面白くなかった。「蝉しぐれ」は映画より小説をオススメしたい。

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