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藤沢周平「孤剣 用心棒日月抄」を読んだ。

 用心棒日月抄シリーズの第2作「孤剣」を読んだ。
 連作短篇の作りになっており、「剣鬼」「恫し文」「誘拐」「凶盗」「奇妙な罠」「凩の用心棒」「債鬼」「春のわかれ」の8篇が収録されている。
 せっかく帰藩がかなった青江又八郎は、たった3ヶ月でまた脱藩することになる。前作では自らの脱藩だったが、今回は中老からの依頼での脱藩だ。危険な書類をもって江戸に向かった大富静馬から書類を奪還する密命を帯びたのである。
 しかし、金は出ないし、機密事項なので藩とも連携できない。結局はもとの長屋に戻り、用心棒稼業で自分を養いながら使命を果たすことになる。
 ただ、ひとりだけ協力者が登場する。ヒロインの佐知である。藩の諜報組織である嗅足組の頭領の娘だ。藤沢周平の描く理想の女といった趣。
 宿敵の大富静馬を倒すだけなら数編で終わってしまうかもしれないのだが、幕府隠密も静馬に目をつけていることから、書類(お宝)奪還レースとなり、話が複雑になっていく。
 短篇としては、高利貸しの用心棒を務める「債鬼」が面白かった。

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