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実感あふれる回想「日本SF誕生」を読んだ。

 先日、小松左京展に行ってきた影響もあって、「昔の日本SF、懐かしいなあ」という気持ちが濃くなった。そんな気分に合うのが豊田有恒の書き下ろし「日本SF誕生 空想と科学の作家たち」である。
「日本SFが根を下ろすまでの事情を、いわば遺言として書き残すことが、馬齢を重ねた同志としての使命かもしれないと考え、あえて語ることとした。」
 という書物で、主に60年代初頭から70年にかけての諸事情を綴っている。
 登場する作家は、小松左京、星新一、矢野徹、筒井康隆、眉村卓、半村良、光瀬龍、平井和正、手塚治虫、永井豪、柴野拓美、田中光二、大伴昌司、山野浩一、高斎正、広瀬正、など。
 とくに小松、星、筒井、平井に関する言及が多い。SFマガジン発行の衝撃や、宇宙塵の功績などが現場感覚で語られる。SFシンポジウムなどのイベントや、アニメやマンガに関する言及が多いのも著者ならではだろう。
 個々のSF作家がどのようにデビューしたか、SFというジャンルがどのように成長していったかをひと目で見渡せる好著である。

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