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井上志摩夫全集「人斬り」を読んだ。

 井上志摩夫全集第2巻「人斬り」。収録作は「剣と鍬」「とうふィ」「凶状狂い」「小判が怖い」「江戸はどしゃぶり」「赤ん坊政吉」「因果小僧六之助」の7編。テーマは「庶民」である。
 「剣と鍬」はのちに長編時代小説「虫けら太平記」となった。冒頭の部分はほぼ同じである。
 第1巻の柳橋史の解説によると、色川武大の原稿には2種類の文字がある。「文字は原稿用紙の枡目一杯の大きな文字と、早書きの小さな文字があるのはよく知られている。大きな文字は思いが先走って筆がすべらないためであり、ここぞというときの作品はすべてそうだったが、それは藤原さんの影響を受けていたからだろう。」「「剣と鍬」は筆致からいって少なくとも書き出し数枚は大きな字に間違いはない。」
 会心の出来だったのだろう。昭和34年の作だがいま読んでも面白い。
 第2巻は悪が滅びる話が多かった。因果応報もの。犯罪者集団とそれを食い物にしようとする小悪党が全滅してしまう「因果小僧六之助」がその典型である。庶民の話としては「とうふィ」がよかった。

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