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「たそがれ清兵衛」を読んだ。

 藤沢周平の短篇集である。連作か、というと難しい。それぞれの短篇相互のつながりはないが、タイトルのフォーマットが「◯◯」「名前」という形で統一されている。
 「たそがれ清兵衛」「うらなり与右衛門」「ごますり甚内」「ど忘れ万六」「だんまり弥助」「かが泣き半平」「日和見与次郎」「祝い人助八」といった具合である。全部面白い。
 各短編の冒頭に「かが泣きという国言葉があって、わずかな苦痛を大げさに言い立てて、周囲に訴えたりすることを指す」「祝い人とは物乞いのことだ」といった説明がある。◯◯の部分はだいたい情けない形容だ。出てくるのは全員下級武士だが、剣の腕はある。
 タイトル作の「たそがれ清兵衛」は妻が病弱なので、家庭の切り回しを一人でしている清兵衛の話である。夕方下城の時刻になると張り切るので「たそがれ清兵衛」と呼ばれている。ごく単純な話であって、よく映画になったものだと調べてみたら、「たそがれ清兵衛」「竹光始末」「祝い人助八」の3本をうまく合体させたものだという。一度観てみたいものだ。

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