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はじめてのマンション。

 新しい地図から会報が届いた。メンバーたちが、はじめて借りた部屋について話していた。
 私もはじめて借りた部屋のことを書いてみよう。それは25歳くらいの時だった。SF大会が終わり、大学を出てアルバイト生活を始めた頃。
 SF大会で知り合った石田君というデザイナーといっしょに梅田駅前のマンションをシェアした。駅の真ん前にある細長いビルで、エレベーターの扉が開くと、いきなり他人の家の玄関の内が見えてしまうような作りだった。階を間違えると、フィリピーナたちの部屋が見えたりした。部屋が二つあり、石田君とひとつずつ使った。本は実家に置いてきた。
 このときの仕事は文書入力。ゼネプロで覚えた親指シフトを使い、アイチタイプという会社で出来高制で仕事をしていた。東通り商店街という品のない通りの果てにあり、私はいつも客引きを断りながら通勤していた。
 そんなに金があるわけでもないのに、毎日のようにパソコン通信をして月の電話代が5万円かかっていたこと、中華丼ばかり作って食べていたことを鮮明に覚えている。

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