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スーパーシティで個人情報ダダ漏れのリスク 

スーパーシティ構想で自動運転の未来が開ける


スーパーシティ構想について解説してほしいという話が何度かあったので、今回はリスクの方に焦点を置いて解説する。

多くの人がスーパーシティ構想で個人情報がダダ漏れなるのではないかと戦々恐々としていると思うが、それはその通りだ。

しかし、スーパーシティ構想がリスクだけでメリットがないかというとそうでもない。

自動運転には街側のインフラが非常に重要で、街の信号や道路にセンサーをおいて、そのセンサー情報を車とやりとりすることで自動運転の未来がかなり開けてくる。

日本のエレクトロニクス産業や、自動車産業にとって非常に重要なプロジェクトなのだ。

ただ懸念事項はやはり、どのような企業が入ってくるかだ。

内閣府地方創生推進事務局のスーパーシティ・オープンラボ(企業マップ)を見るかぎり、そんなにおかしな企業は入っていない。

一つ気になるのは浙江財閥のあの人の会社が何社か入ってしまっていることだが、それ以外はまともな堅い会社が多い。

そこはやはり当時の地方創生担当大臣だった片山さつき議員が、エレクトロニクス業界の人に相談しながらおかしな企業がスーパーシティ構想に参画しないようにやってきたおかげだ。

相手も政治力が強いので、多少入ってしまうのは仕方がない。


中国との契約は大丈夫か?


スーパーシティ構想でみなさん一番心配しているのは、中国と提携しているという部分だろう。

これは確かに怖い。

実際、中国政府と地方創生に関する協力を強化する覚書を交わしたと発表されていて、最先端技術の実証実験を街全体で行うという。

中国と実験をすること自体が悪いわけではないが、今までの日本の経緯からして、中国と何か約束をしたら、契約の内容があまりにもひどすぎて、機密情報がダダ漏れだったということがたくさんある。

例えば、日本の某独立行政法人の研究機関の覚書を手に入れたことがある。

中国科学院と提携するときの契約書面だが、なんと管轄は無い。
「日本の研究機関が中国に一方的に技術を提供し続ける。研究経過を提供し続ける」
そう書いてあるだけの契約書だ。

そういうことがスーパーシティ構想の共同実験の覚書でも書かれていないか心配だが、内容は発表されていないのでよく分からない。

私も中国企業と共同研究をやることもあったが、そういうときは慎重に契約書を作る。

共同で実験や研究をするときは、それぞれの会社で技術を持ち寄る。
「自分たちの技術はここ、私はこの部分、あなたはこの部分」
という感じで持ち寄り、それぞれの範囲を超えないようにする。

「自分の技術は自分のもの、あなたの技術はあなたのもの、これを越えて知財の申請などをしてはいけない」

こういうことをしっかり覚書の中に書いているのかは気になるところだ。

そうでないと、せっかくスマートシティ、スーパーシティを作り、いろいろな実験をやっても、実験データが全て中国に流れていってしまう。

中国はそのデータを改良してもっと優れたスマートシティを作ってしまう。

そうすると私たちの国民の税金とエレクトロニクス企業や自動車メーカーの努力が水泡に帰すわけだ。

くれぐれも契約は慎重に行っていただきたい。
もう契約してしまっているので、どのような内容かはわからないが。


個人情報保護法の改悪


私たちの個人情報の取扱いは法的にどうなるのか。

アンドリュー・ヤンというファーウェイ一味の人がいるが、彼の功績はカリフォルニア州でオプトアウト型のプライバシー保護法を推進し、改正させたことだ。

私たちの国も2020年3月に個人情報保護法が改正されて、個人が特定されなければ、個人情報をあげてもかまわないとなっている。

スマートシティのデータは基本的にセンサーデータだ。

例えば、歩いているときの振動のデータ。人が何時頃にどの道を大勢通るのかというのがデータ化される。足音でそれが誰かは特定できないから、別に売り飛ばしてもかまわない。

監視カメラの情報も顔にモザイクをかけたら流出させてもかまわない。

モザイクを除去する技術もあるのであまり意味はないのだが、そのようなセンサー情報を提供してもかまわないという建付けになっている。

補足だが、カメラにはCMOSセンサーやCCDセンサーが入っていて、その知覚情報も一応、センサー情報と私たちは呼んでいる。

スーパーシティでは、データ提供に差別的な条件を付加してはならない。日本人の個人情報は外国人にも提供しなければいけないということになっている。

ここでもまたオプトアウト原則で、後で拒否するシステムだ。

使われた後で「私の情報は使ってほしくなかったから、何の情報を使ったのか、誰に渡したのか開示してほしい」というシステムだ。

オプトインは事前承諾で「承諾してから私の情報を使います」ということだが、

オプトアウト原則は、
「情報が流出してどこかで自分の情報が最悪なことに使われて、情報が洩れていることに気が付いてから、どこから漏れたのか、誰が漏らしたのかを調べることができる」
という犯罪者有利な原則だ。


データローカライゼーションは難しい


私の著書『米中AI戦争の真実』などで、データローカライゼーションにしなければ、地球の未来は危ないということを書いているが、実際のところ、データローカライゼーションは難しい。

なぜかというと、
国際協定のTPP、WHO、日米デジタル貿易協定で、私たちの日本人の個人情報は名前が分からなければいくらでも提供してかまわないという建付けになっているからだ。

法律を優先劣後構造的にいうと、国際協定があって、憲法があって、その下に普通の法律がある形で、個人情報保護法は国際協定よりも下位にあるのでまったく守れない。

ただ、政府側は、
「危険な機密情報が漏れるということは心配しないでください。政府や安全保障上の情報は流出させてはならない。第三者提供してはいけないという規定があるので、皆さん安心してください」
と言っている。

それは当然だが、国民の個人情報を勝手に売る約束をしておいて、自分たちの情報だけ守るのかという気がしないでもない。

スーパーシティ構想には良い面もたくさんあるが、やはり一番大事な個人情報をいかに守るかという部分の建て付けは非常に弱い。

その上、個人情報を特定できる技術も実は開発されていて、中国で発表されている。それについてはまた別の機会で紹介する。

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