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櫻井よしこ先生の『NTT法廃止は国益』論はないと思います

2023/09/05

https://www.youtube.com/watch?v=W_0o7aEn5O8

■  携帯電話をトランシーバーと誤解か

櫻井よしこ先生といえば、保守派の中の大御所で、ラスボス感の溢れる論客だが、その記事に少し疑問がある。『NTT法廃止は国益』というタイトルの記事だ。

この記事の感想として、NTT売却を言い出した萩生田売国政策をかばう為に書かれたのかと疑いたくなる。納得ができる内容ではない。

どのような良い理由を思いついたとしても、防衛費を賄うのに防衛インフラを外資に売るのは、本末転倒であり同意できる話ではない。防衛インフラの一部である通信網を売り飛ばすのに大賛成という狂気の沙汰としか思えない売国政策が、国益になるとは思えない。

櫻井先生は、そもそもNTT法の目的が今の時代に合っておらず、国益にかなっていないから、NTT法を廃止するのは良い事だとしている。
それに2つの理由があると言う。

1、日本全国に固定電話を設置し、ユニバーサルサービスを実現させ実施するのは時代遅れだ。

2、研究開発の成果を公開し普及させることが、中国のスパイに狙われる原因だと、論を展開している。

第1は、日本全国に固定電話を設置し、ユニバーサルサービスを実施するのは、固定電話が携帯電話に代わり、電話のインフラを電波が担うので要らないと言っている。

読んで驚いた。こんなことを書いて良かったのか。
もしかすると、先生は携帯電話の電波は、トランシーバーのように端末同士で直接飛ばし合っていると思っているのだろうか。あるいは東京タワーやスカイツリーの電波塔から、テレビの電波のように飛んでくるとでも思っているのだろうか。

通信インフラは必要である。通信インフラの上に基地局というアンテナが建っているのでやはり必要なのだ。

基地局同士を無線で飛ばすファーウェイのシステムもあるが、やはり有線の方が安定する。無線同士でやり取りするとデータが壊れたりする。地中のインフラを結んだ方が安定していることには変わりがない。

Wi-Fiもルーターを経由して、固定電話の通信網とインフラを共有しているので、これが要らないとなれば、宇宙から直接に衛星でやり取りをするしかない。やはりまだ通信インフラは必要なのだ。

先生は、目的が固定電話を普及させることだと言っているが、そもそもNTT法にはその様なことは一言も書いていない。

(目的)
「第一条、日本電信電話株式会社は、東日本電信電話株式会社および西日本電信電話株式会社がそれぞれ発行する株式の総数を保有し、これらの株式会社による適切かつ安定的な電気通信役務の提供の確保を図ること並びに電気通信の基盤となる電気通信技術に関する研究を行うことを目的とする株式会社とする。」

日本の隅々まで通信網を築き、そのために常に技術開発をし、サービスを提供することが目的という意味で、固定電話を普及させる事だとは書いていない。ひと言も書いてない事をあえて批判し、けしからんから法律を廃止しろというすごい持論を展開している。


■  内容を理解していない意味不明の論

第2は、研究開発の成果を公開して普及させることが目的にあるから中国に盗まれると言っているが、研究開発の成果を公開して普及させるとは、一言も書いていない。書かれてもいない文言が気に入らないから廃止しろというのは無理だ。

研究開発の内容を公開し普及させるというのも、ひと言も書かれていない。

(責務)
「第三条、会社および地域会社は、それぞれその事業を営むに当たっては、常に経営が適正かつ効率的に行われるように配意し、国民生活に不可欠な電話の役務のあまねく日本全国における適切、公平かつ安定的な提供の確保に寄与するとともに、今後の社会経済の進展に果たすべき電気通信の役割の重要性にかんがみ、電気通信技術に関する研究の推進及びその成果の普及を通じて我が国の電気通信の創意ある向上発展に寄与し、もって公共の福祉の増進に資するように努めなければならない。」

「電気通信技術に関する研究の推進及びその成果の普及を通じて我が国の電気通信の創意ある向上発展に寄与し」と書いてあるが、研究成果の普及は技術の秘密を公開する意味ではない。

研究を通して新しくどのようなサービスが考えられるか、新しい技術でどのような製品が考えられるのかという成果の普及であり、研究内容の公開ではない。

以前にNTTにある技術についえ、どのように作り、研究されているかを聞いた事があるが、公開できる範囲と公開できない範囲があり、きちんとお断りをされた上で公開できる範囲内を教えて頂いたことはあるが、全部教えてもらえることは絶対にない。

危ないのは日本にスパイ防止法がないからであってNTT法ではない。

今回の先生の記事を拝読させて頂いて、意味がよく解らないと感じた。萩生田さんの売国政策を庇っている様にしか見えない。考え方の違いなのかもしれないが、NTT法を廃止すれば、国が保有する3分の1の株式を売却できるようになり、現実的に購入できるのは外資か、あるいはソフトバンクくらいだ。

先生はたまにトンデモ論を唱える。「NTT法廃止が国益」もそうだが、2021年6月24日の記事にも「ワクチン接種加速で国難克服」があった。
その時に、ワクチン接種加速で超過死亡率もすごく、国難が加速するのではないかと思った。「消費税増税は未来への責任」も、未来への責任ではなく過去の尻拭いだ。

NTT株を売却は、例の郵政民営化と同じような顛末にしかならないと思われる。

日本の防衛を強くするために、有事が始まる前に一番必要な、通信という防衛インフラのNTT株を売却することが、なぜに国益に適っているのか全く理解できない。

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