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米ラジオ番組でリスナーが大笑いした半導体不足バカ話
◻️2022年3月17日
最近はロシアのウクライナ侵攻問題や、半導体不足で困った日本企業が政府に対してロビイングをしてもまったく声が届かないことなど、重い話題が多かった。
そこで今回は息抜きとして、半導体不足に関するちょっと笑える話をしよう。
◼️弊社CTOジェイソンのラジオ出演
最近は弊社CTOジェイソンの話を聞きたいというアメリカ人が増えてきた。メディアに出る機会も増えてきて、私も時々一緒に出演している。
日本では『深田萌絵』という名前は放送禁止用語のような扱いだが、アメリカでは報道してもらえる。
まだ報道の自由が残っていてうらやましいと思う今日この頃だ。
先日もジェイソンがラジオ番組の生放送に出演した。それが面白かったので皆さんにご紹介する。
テーマは半導体不足である。
私は半導体不足問題を長らく解説しているが、この問題の原因を皆さまに短い言葉で簡単に説明することは難しく、それが悩みでもある。
しかしジェイソンはたった一言二言で皆に伝わるように話すことができる。今回も「なるほど!」と思うような話だったので皆さんにも紹介したい。
◼️インテルに500億ドル出すのは、、、
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https://www.trendforce.com/presscenter/news/20220314-11159.html
現在の半導体不足を演出しているのは、世界の半導体製造の7割以上を支配する台湾TSMCとその仲間たちである。
その状況を打破するため、アメリカはインテルを中心に半導体製造を強化しようと動いていた。
ところがインテルはあっという間にTSMCにひれ伏し、半導体製造はTSMCにお願いするというスタンスを取り始めた。それは去年の秋ぐらいから始まっている。
ラジオ番組のアンカーからの質問だ。
バイデンの半導体不足解消政策『チップス・フォー・アメリカ』をどう思うか?
その政策で半導体不足解消のために、インテルに500億ドルを出すことをどう思うか?
それに対してジェイソンはこう答えた。
例えばネットやSNS上ではひどい言論統制が行われている。言論の自由が奪われていると皆さん感じているだろう。
そこで、インターネットの世界に言論の自由を取り戻すため、GAFAに500億ドル払って「言論の自由を返してください」と頼むとしたら?
「フェイスブックさん、アップルさん、500億ドル差し上げますから言論統制をやめてください。」と言ったところで言論統制が止まるはずがないという話を聞いて、アメリカのリスナーたちは大笑いだ。
「なるほど。言論の自由を潰している犯人に金をやっても言論の自由を取り戻せるはずがない。」
「同じように半導体不足を引き起こしている犯人に金をやっても半導体不足が解消されるはずがない。TSMCや彼らに寄り添っているインテルに金を出すのはそういうことだ。犯人に金を出すことだ。」
とパッと理解してくれた。
ジェイソンは説明が上手いといつも思う。
このTSMCに金をあげて半導体不足を解消しようという話は、2001年に出版された『やがて中国の崩壊が始まる(ゴードン・チャン著)』という本に書かれている「中国が金持ちになれば民主化して中国共産党は崩壊する。安心して中国に投資しよう。」というプロパガンダによく似ている。
この本は大ベストセラーとなり、当時22、3歳だった私も読んだが、中国に金を注ぎ込んだら中国共産党が崩壊するというロジックが全く理解できなかった。
普通に考えて、独裁国家に金をあげて独裁国家が金持ちになれば崩壊するどころかより強く、支配的になるだろう。
やはり単なるプロパガンダだった。そしてこの本を書いたのは浙江系の人だったというオチまでついている。
◼️もし世界からTSMCが無くなったら、、、
アンカーからもうひとつ質問があった。
今、ロシアによるウクライナ侵攻問題がある。
中国と台湾の関係も言われているが、仮に中国が台湾を侵攻し、TSMCが無くなったら世界はどうなってしまうのか?
これに対するジェイソンの答えがまた面白い。
もし、世界からアマゾンが無くなったらどうなるか。物がどこからも買えなくなるわけではない。
アマゾンが無くなったら他のネットショップが売り込んでくる。
道端の小売店だってビジネスチャンスを掴むため、もう一度頑張るだろう。
金を儲けるチャンスを掴みに来るベンチャーや、中小企業が活性化されるだけだ。
確かにその通りだとまた大爆笑が起こる。
半導体の世界は今まさにそういう状態なのだ。
TSMCやUMC、SMICなどの台湾浙江財閥系企業が半導体製造の世界シェアの7割以上を持っている。
彼らはその立場を利用し、半導体素材メーカーや装置メーカーをも支配している。半導体の設計だけを行うファブレス企業はTSMCの言いなりにならなければ作ってもらえないので立場が弱い。
そうやって彼らは半導体産業全体を支配し、他のコンペティター(競合)を虐めている。
今の半導体産業の世界はTSMCに牛耳られていて、新陳代謝を失っている。
TSMC以外の会社が新しいアイデアを思いついても、エンジニアが頑張ってTSMC支配を覆すような製品を開発しようとしても、芽が小さいうちにTSMCが全て潰してしまう。
こういう課題を抱える現在の半導体産業で、もしTSMCが無くなったら、世界には様々な種類の半導体製造メーカーが数多く出て来て逆に良くなるかもしれない。中小やベンチャーが活性化されるかもしれない。
このようにリスナーたちは解釈したようだ。
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