【米政府関係者との話】TSMC日本誘致と米懸念事項
◻️2022年3月13日
最近はアメリカの様々なシンクタンクの関係者や政府某機関の関係者の方々と、半導体不足解消に向けた話し合いの場を持たせていただいている。
セキュリティクリアランスの関係でアメリカ市民である弊社CTOジェイソンしか参加できない会議もあるが、私は日本人として可能な範囲で参加している。
「半導体不足が起こる。トヨタなど日本の自動車メーカーが狙われている。」という内容の英語の記事を私はいくつか投稿していた。それらが政府関係者の目に留まり、欧州からも問い合わせが来るようになる。
それがきっかけでこのような話し合いの場に参加するようになった。
◼️日本の判断ミスが半導体不足に拍車をかける?
その話し合いの中で浮かび上がってきたのが、「日本の判断ミスが世界の半導体不足に拍車をかけるのではないのか。」という懸念である。
残念ながら今の日韓関係はひどく悪い状態だ。
その原因はやはり韓国の文在寅前大統領が強烈な反日姿勢を貫いたことにあり、通常では考えられないようなことを日本政府や日本企業に対して行ってきた経緯がある。
そんな中、ある疑惑が持ち上がった。
『レジスト』半導体の回路パターン転写に使われる感光材。
『フッ化水素』半導体基板の洗浄に使われる。
『フッ化ポリイミド』有機ELディスプレイに使われる。
これらは日本が多くのシェアを持つ最先端の半導体素材であり、いずれも軍事利用可能な輸出管理品であるにも関わらず、韓国は第三国に横流しをしていたという疑惑だ。
「実際に韓国での製造に必要な量を超えて半導体素材が日本から出荷されている。余分に出荷された分はどこに行ったのか」という疑問に対して文政権は日本が悪いという説明ばかりで真摯に答えなかった。
そのため、優遇措置として簡略化していたこれら3品目の輸出手続きを元に戻し、きちんとした手続きを取らなければ出荷できないようにした。
それらの半導体素材が手に入りにくくなったことで、韓国の半導体企業からアメリカへの半導体チップの納品が滞るようになる。
結果的に日本の輸出管理の厳格化がアメリカの国家安全保障を揺るがすという事態になりつつある。
◼️インテルの裏切り
『CHIPS for America Act』とは、アメリカ国内における半導体製造の促進と半導体サプライチェーンの強化などを目的とした法律だ。今アメリカはそれに関連する法律の制定に動いているところである。
アメリカの戦略として半導体製造はアメリカ国内でインテルを中心に行うが、外資も排除せずに台湾TSMCと韓国サムスンの二社を競わせて適度な競争を保ちながらインテルを強くしようと考えていた。
ところが肝心のインテルが昨年夏頃からおかしな動きを始める。
期待を寄せていたCEOのパット・ゲルシンガーはあっさりTSMCに篭絡され、インテルは立て続けにTSMCへの製造委託や台湾への投資の強化を発表する。
半導体不足解消の頼みの綱であるインテルが、半導体不足の原因を作った張本人であるTSMCに懐柔されたことにアメリカ政府関係者の間では不満が爆発寸前で「インテルはもう信用できない」という雰囲気が漂っている。
◼️サムスンに頼るしかないアメリカだが
インテルの裏切りによって残念ながら半導体製造という分野でアメリカが頼れるのはサムスンだけという状況になってしまった。
サムスンは半導体製造で十数パーセントのシェアを持っている。TSMCを始めとする台湾勢に約70%を抑えられている中で、サムスンがもっと強くならなければアメリカは完全にTSMCに負けてしまう状況にまで追い詰められている。
サムスンに頑張ってもらうしかない状況で今度は日本がサムスンに対して半導体素材の出し渋りをしている。最先端素材だけではなく普通の素材もだ。
助成金の件といい、技術移転の件といい、日本政府は異常なほど台湾TSMCが有利になるように動いている。
サムスンは「日本からの出荷が一部滞っていて半導体素材が足りないのでアメリカ向けの最先端チップが納品できない。」と言ってアメリカに泣きついている。
頼みの綱だったインテルが駄目。TSMCは中国を助ける敵。ではサムスンにと思ったら日本が半導体素材を出し渋っている。本当にどうしたらいいのかと皆で頭を悩ませているのが今のアメリカだ。
◼️難しい状況だがバランスが大事
今、日本では嫌韓ムードが高まっていて日韓関係は政治的に非常に難しいシチュエーションにある。そのことをアメリカの方に話したら非常に驚いていたが、今の状況を是正しなければどうなるか。
日本は韓国に対して罰を与えるつもりで半導体素材を出し渋っているが、その分は台湾経由で中国へと渡る。
結果として人民解放軍は強化され、米軍は弱体化される。今の日本は自分で自分の首を絞めているような状態にある。
アメリカとの話し合いで、「日本は今ジレンマを抱え非常に難しい状態に陥っている。韓国側から誠意を示してもらわなければ国民感情の面でも動きづらい。」という事を話した。
非常に難しい状況にあるのは事実だが、それでもバランスを取っていかなければならない。あまりにも台湾一辺倒だと世界のパワーバランスが崩れて自ら危機を招く結果となってしまう。
そもそも日本が日本人の手で日本国内の日本企業で製造すれば解決することなのに、日本政府はTSMC一辺倒に突っ込んでいる。
それが非常に危険な状態であることを日本政府は全く解っていないことが本当に頭痛の種だとアメリカ政府関係者は漏らしていた。
ITはもはや民間が軍事を超え、IT技術を制する者が世界を制すという国際マフィアと国際政治の世界。
深田萌絵メルマガ「世界とITのヤバい話」では、日米中のニュースを中心に、IT起業家と元アナリストの視点から多角的に解説。
他にも、紙面ではなかなか取り上げられにくい幅広いお話ができればいいなと思っています。
よろしければ、ぜひご購読ください。
この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?