台湾研修レポート「台湾のお茶文化」byだて

※この文章は「深志高校台湾研修」のレポートの一部を加筆、修正したものです

 台湾研修3日目のB&Sプログラムで、猫空(マオコン)を訪ねた。
 私たちが滞在していた台北から鉄道で「動物園」駅へ。そこからロープウェイに揺られること30分。合計1時間ほどで猫空という山中の土地に立っていた。
 一言に「山中」と書いても、日本の(まして長野県の)山とは様相がまったく異なる。
 気候区分的には亜熱帯、沖縄本島よりも緯度が低いこの山には広葉樹が多く、ツル植物もところどころに見られる。針葉樹の「し」の字も見つからない。その代わりといっては違う気もするが、日本ではあまり見ない笹も多く見当たる。
 また、この景色が私を落ち着かせないのは、山から生えるビルのせいかもしれない。ロープウェイから降りた場所は見晴らしがいいのだが、少し先にマンションが見え、ゴミの焼却施設があり、霞む空の向こうには世界で一番高いビルの台北101。
 私の中での山は、北アルプスから眺める壮大な雲海だとか、田畑と住宅が小さく見えるのがいとをかし、というものだった。
 高層建築は遠くから見ても大きさはあり、自然の壮大さに圧倒されるわけでもなく、人の営みの小ささに放心することもなく。ただ見慣れない風景に目を見開いていた。
 この猫空を訪れるまでにも感じたことだが、台湾の山々は険しい。勾配が急であったり凹凸が激しいのだ。
 そんなこの土地では茶畑が散見される。風通しの良さと温暖な気候が茶葉にはちょうどいいのだろう。
 猫空はこのお茶農家による茶屋で有名だ。

道中の茶畑(手ブレヒドイや)


 お茶とちょっとした料理を、山の景観を眺めながら。
 都市の喧騒から一時間で逃れられるこの地は、なるほど、現地の人にも人気なようだ。ロープウェイから降りてからバスにも乗ってやってきた茶屋だが、ちらほらと客の姿がある。
 外の席も多く、周りの木々に隠されるように机といす、パラソルと透明な風よけシートが並ぶ。景色が良いので、外の席に座る。


 ちなみに、この時すでに台湾時間15時だ。昼食は食べずここまで山道を歩いたりもした。一刻も早く食事にありつきたい私たちは、すべて漢字の難解なメニュー表をスマホの適当な翻訳を使って解読し、それぞれ好きなものを頼む。
 ここで一つ誤算。一人一品のつもりで注文したのだが、台湾は大皿から取り分けるのが主流だったな、と料理が出てきてからやっと思い出す。
 少しひいひい言いながら取り分けた料理を平らげる。
 さてお待ちかねのお茶だ。今回はグループ内でのお茶の好みに合わせて、ジャスミン茶になった。烏龍茶、また今度飲みに行くから待ってろよ。
 この店まで現地の大学生さんの案内でたどり着いたが、お茶の入れ方も学んだ。
 まずお湯を沸かす。水道の水はちゃんと火を通さないといけない。



 それからそのお湯を、茶こしのついた茶海(ちゃかい)と我々が口をつける茶杯に入れて温める。その間に茶葉を入れた茶壷(急須)にお湯を注ぎ、そしてなんと、すぐに捨てた。
 これは驚き。我が家では1回目を入れ、2回目を入れ、3回目もたまに飲む。いや、特別我が家が貧乏性だからだけではないはずだ。
 その大学生の彼によると、農薬を流すためだそう。もっとも、高級な茶葉であれば、一番煎じも飲む人がいるらしい。なるほどなぁ、と納得した。茶壷は温まるし、農薬にもさようなら。日本では農薬の心配がないのだろうか……心配になってきた。
 お茶は数分蒸らしてから、一度、茶海に移して茶葉をこして、全員の温まった茶杯に注ぐ。
 写真の通り、茶杯はとても小さい。日本のおちょこみたいだ。ゆっくり、温まって飲む。
 私たちが台湾を訪れた3月は、現地の人にとっては冬だ。「たかが台湾の冬」と侮っていた私は、猫空という山間部で体が冷えていた。いや、山の風通しが想像以上に良かった。
 そんな中この温かいお茶は、緑に囲まれた環境も相まって、多幸感をもたらした。台湾だけの経験として、十分すぎるほど堪能した。
 帰り際、今回使い切らなかった茶葉をいただいた。これで日本でもおいしいお茶が飲めるぜ。

 帰国して早速、母に台湾の写真を見せて思い出話をした。すると、戸棚の奥から見覚えのあるものを引っ張り出してくる母。


 なんでうちにあるんだよ!


この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?