教えてくれ by雪村平良

 贅沢はしなくていい。スーパーの安いカップラーメンで腹を膨らませて、顔にできたにきびに恨み事を言う毎日の方が絶対に面白い。

 有名にならなくていい。誰にも注目されることなく、驕らず、静かに社会の歯車になっている方が私に似合っている。

 人の上に立たなくていい。ふかふかした椅子の上でふんぞり返っている奴なんて、私の一番大っ嫌いな人種だ。誰かのことをこき使うよりも、誰かにこき使われて疲れ果てた後、自分の家のベッドに倒れ込む方が寝覚めがいいと思うし。

 とかなんとか、偉そうに言ってみた。社会の厳しさなんて知らずに、綺麗ごとばかり並べたがる私が偉そうに語ってみた。

 面白くて、身の丈にあっていて、寝覚めがいい毎日。今の私は、それが好き。きっとそれが、理想的で心地いい。

 でも、私の身の丈にあっている毎日は、きっと苦しい。私という人間は、ひどく小さい器で出来ているから。人々が生きている社会は大きすぎて、私の小さな器は欠けてしまう。

 面白い毎日は、きっと難しい。エンタメといじめの境界線が分からなくなって、結局身動きが取れなくなってしまうだろうから。自分以外の人が笑っていても、自分が笑っていられない毎日なんて、きっと価値がない。

 寝覚めがいい毎日なんて、きっとこない。苦しくて難しい日々を迎える朝が心地良く感じられるはずなんてないから。

 未来の自分に聞きたい。教えてほしい。

 あなたは今、私が望んでいるような暮らしができているの? 何を考えて、どんな毎日を暮らしているの? 今の私が想像している暮らしよりも、数万倍面白い暮らし方を発見してくれてたらいいのにな…………まあ、きっと無理だけどね。

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