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海外版BL「M/M」ってなに?入門編にぴったりの短編小説6選

皆さんはM/Mというジャンルをご存知でしょうか?
M/Mとは、主に英語圏で出版されている男同士の恋愛を描いた物語のこと。MがMale(男性)、「/」は日本でいう「×」を表しています。

ジョシュ・ラニヨンの『アドリアン・イングリッシュ』シリーズなど日本でも話題になった作品も多く出版されているので、ご存知の方も多いと思います。
しかし、これらの人気作はシリーズものが多く、長いし気になるけど手が出せない……という方もいるのではないでしょうか?

今回はそんな方に朗報!日本語版で読めるM/M作品の中には、気軽に読める短編作品もあるんです。
現在このようなM/M短編作品はほとんどが新書館モノクローム・ロマンス文庫から出ているのですが、長さ約50~60ページとちょうど読みやすい分量の作品が多数出版されています。

「女性が(主に)女性のために書く」、欧米版BL

M/Mの特徴はなんといっても、ストーリーの重厚感。ミステリーやファンタジーをベースとして描かれているものが多く、ボーイズラブ的な要素を抜かしても、一つの小説としてとても面白く読むことができます。

さらに日本のBLと比べM/Mでは、ゲイと呼ばれる人たちが抱える現実の問題が話のテーマとして扱われることが多く、ロマンスだけに終わらない、考えさせられるような話も多いです。

というわけで今回は、ちるちる編集部オススメのM/M作品をご紹介します。
短編とはいえ、そうしたM/Mの良さを垣間見ることのできるものになってますので入門としてぜひお手に取ってみてください!

偽りの夜が終わる時』作:ショーン・マイケル

絵:スカーレット・ベリ子、訳:冬斗亜紀

あらすじ
「いつでも俺が必要だっただろ、ボーイ」BDSMクラブでの潜入任務の後、捜査官ブライアン・ハーリーは、潜入パートナーであったグリフィン・マクマヌスへの思いにとらわれていた。一方でグリフィンもまた任務の余波で自身の問題を抱えていた。もう二度と会わないはずだったふたりが再び出会う――。

BDSMクラブ内の麻薬取引に関する情報を集めるために別々の部署から潜入捜査バディに選ばれたブライアンとグリフィン。クラブ内に潜入するためにSM愛好家として主従関係を結ぶパートナーを演じる。約6か月間、SMプレイを通して体を交わした二人が任務終了後もお互いの体を求めてしまう。

M/Mの重厚なストーリーのイメージと打って変わり、主人公2人が欲望に従い、素直に求め合う姿が刺激的です。濃厚なエロシーンと欲望が詰まった大満足な短編となっております。

英語版はこちら。Breaking Cover』Sean Michael

帰郷』作: ベッカ・シーモア

絵:Dite、訳:冬斗亜紀

あらすじ
8年間のNASAでの海外生活を終えて故郷に戻ってきたショーンは、幼なじみのミッチと再会した。ミッチはかつてショーンが救いようもないほどに恋していた相手。そしてNASAに行く直前に忘れられないキスをした相手。ショーンはNASAで夢だった仕事に情熱を燃やすか、愛する人の近くで暮らすかの選択を迫られる――。オーストラリアの田舎町を舞台に、自分の気持ちに正面から向き合うことの大切さを教えてくれる物語。

8年前に失恋した幼馴染のミッチと再会したショーン。2人が8年ぶりに再会し、お互いの想いを確かめ合うほのぼのとしたラブストーリー。特にショーンの家族が彼の恋を応援する姿がとても微笑ましい!

短い時間軸ながらも丁寧に人物の心情描写を表現する作風が短編小説ととても相性がいいです。

英語版はこちら。『Realigned』Becca Seymour

それを愛と呼んで』作:タマラ・アレン

絵:門野葉一 、訳:冬斗亜紀

あらすじ
みな絶望に押しつぶされそうな大恐慌のNY、新聞記者のウィットは安宿でピカピカの靴を履いた男・ピーターと出会う。家具が持ち出された屋敷での一夜限りの遊びだったのだが――。

時はちょうど一世紀前、アメリカ社会の悪夢のような時代、それは“大恐慌”。大量の失業者でごった返すNYを舞台に大人の恋を描いた物語。

息が詰まるような明日が見えない日々の中で交わされた一夜限りの関係だと思われた2人がお互いの救いとなり、他の人にも希望を与える姿をぜひご覧ください。

英語版はこちら。『If It Ain't Love』Tamara Allen

バレンタイン・シャワー』作:ジョン・C・ハウザー

絵:スカーレット・ベリ子、訳:冬斗亜紀

あらすじ
ルーベンは出会い系サイトで結婚相手を大まじめに探しているのだが、全然うまくいかない。彼の分析上、そろそろ家庭を持つべき頃合いなのに。数字ならいくらでも読めるが、人間は彼にとっては難解すぎた。いつも相談に乗ってくれるボスのテリーすら何か挙動不審になってきて…。

主人公のルーベンは英語で「geek」と形容されるいわゆる「世間からちょっとズレてる理系男子」。そんなルーベンにとって上司であり、親友のテリーは特別な存在として描かれます。
結婚相手を探す中で、不器用なルーベンが少しずつ自分の気持ちに気がついていく、もどかしくも可愛いラブストーリー。

ちょっと変わりものだけどなんにでも真剣なルーベンが本当の愛を見つける過程にキュンキュンが止まりません。

英語版はこちら。『Valentine Shower』John C. Houser

この喝采を彼に』作:T・A・ウェブ

絵:藤たまき、訳:冬斗亜紀

あらすじ
記者のポールは、クラブの楽屋でマシューというドラァグクイーンにインタビューする。大柄で毛むくじゃらのマシューは18歳の時から30年近いドラァグクイーンのキャリアを持ち、エイズ対策に100万ドル近い寄付金を集めている。そのモチベーションは、とたずねられたマシューは、昔の恋の話を始めた。1980年代、それは甘く苦しい運命の恋だった。

エイズが主題の本作。ある夜を境に変わってしまった幼馴染の運命。あの時代にはありふれていたのかもしれない、それでも忘れてはいけない、悲しい恋物語。

ぜひ長編でしっかり読んでみたいと思わせられるような厚みのあるストーリー。終盤は思わず涙してしまうのですが、そこはかとなく希望の見える読後感。ドラァグクイーンの回想という設定も相まって、どこか哀愁漂う作品です。

英語版はこちら。『Let's Hear it for Boy』T.A. Webb

クリスマス・スレイブ』作:シャノン・ウェスト

絵: 麻々原絵里依、訳:冬斗亜紀

あらすじ
新しい恋人に裏切られ、有り金を失って絶望のクリスマスを迎えようとしていたマイケルの前に、別れた恋人のローガンが姿を見せる。金と引き替えに、クリスマスまでの一週間、自分の奴隷になれと言うが……。

彼氏に裏切られて一文無しの不憫な男の子が、最愛の元カレと再会し、お金のために奴隷契約するというベタなストーリー展開ながら、王道ロマンティックラブストーリーと言った感じで、スラスラ読めちゃいます。

ローガンがザ・スパダリ感があって惚れました。
主人公のマイケルは不憫ではあるのですが、割とダメ男。ですが、それもいいスパイスになってます。もっと2人のイチャイチャが読みたい!

英語版はこちら。『The Christmas Slave』Shannon West(※現在日本版Kindelでは取り扱っておりません。)

いかがでしたでしょうか?
最近は日本語で読める作品も増えてきたM/Mですが、まだまだ今から読み始めれば全作品制覇できる量なので、ぜひこれを機会にM/Mデビューしていただければと思います。

また、一度日本語版で読んだ短編M/Mを英語で読み直すのもいいですね。
物語に萌えながら英語の勉強にもなるという、まさに一石二鳥の楽しみ方ができますので、是非一度読んでみていただけたら嬉しいです!

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