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反対派は2年前より増加傾向!? 実写化BLについて聞いてみた

今、実写化BLがアツい!!!
『美しい彼』の大ヒットが記憶に新しいですが、今年も人気作品を原作にしたBLドラマがたくさん放送されています。BLアワード2023コミック部門で1位を獲得した『体感予報』も中国、日本で大人気。そしてBLアワード2020コミック部門1位『ワンルームエンジェル』も2023年10月にスタートしました。

しかし、そこで巻き起こってしまうのが実写化賛成/反対論争。
『魔道祖師』や『赤と白とロイヤルブルー』など海外の実写化BLは好評の声が多いものの、国内作品になると原作ファンから不安の声が挙がることもしばしば…。

そこで今回はBL実写化の是非についてちるちるユーザーを対象にアンケート調査を実施しました!
(このアンケートは2023年8月に「ちるちる」内で実施したアンケートで、650名のちるちるユーザーに回答いただいたものになります。)

それではさっそく結果を見てみましょう!

Q.商業BLネイティブは実写化反対

実写化BLが盛り上がりを見せている昨今ですが、BLコミックをメインに読むユーザーの約2/3が実写化に反対という結果になりました。
賛成の多かった10代~20代でもその数は半分以下となり、40代以上のユーザーは実に8割以上が反対の意を示しています。

「反対」と答えた方に理由を聞いてみると、主にクオリティや世界観の点で不満を抱いていることが分かりました。
一般的にBLドラマは低予算で制作されることが多く、またどうしても三次元で再現できる部分の限界もあり、ファンが求めているクオリティに届いていないのが現実のようです。

実は2年前にも同じようなテーマでアンケートを取っており、そちらでは「反対」が57%、「賛成」が43%となっていました。
制作側の盛り上がりと反比例するように反対派がじわじわと増えているのが現状のようです。
現在、BLドラマを主に支えているのは、戦隊ファン、俳優ファン、アイドルファンです。商業BLファンは、原作を読んでいるだけにドラマを見て違和感を感じることが怖いのではないでしょうか。そのため評判を確かめてからドラマを見る傾向があります。ちるちる編集部は特にその傾向が強く、商業BLには敏い記者たちも、実写鑑賞には二の足を踏みがちだったりするのです。

2021年9月に実施したアンケート


Q.実写化の際、内容は原作に忠実にあるべき?

やはり原作原理主義が圧倒的に多い結果となりました。
欲を言えばキリがないですが、原作のキャラの雰囲気をくみ取っていないビジュアルを寄せただけのキャスティングや中途半端なエロ、ストーリー展開に違和感のあるオリジナル部分などはやはり気になる所。
これらの不安を払拭できた作品の信頼度は大きいです。

しかし、原作に忠実でない作品もヒットしている事実があります。例えば『美しい彼』はすべてが原作通りというわけではないですよね。
単純にアンケートの結果だけを信じてよい、というわけではなさそうです。
実写化に関しては、原作ファンの意見を聞くべきところと聞かなくてもいいところを判断しないといけないでしょう。

Q.どんな実写作品が面白かった?

アンケートでは、ここ数年で制作された実写化BLドラマ・映画をすべて選択肢に記載して、視聴した作品、おもしろかった作品を記入していただきました!

視聴が多かった作品は『きのう何食べた?』や『おっさんずラブ』などベテランの俳優さんが出演している作品という結果となりました。

一方で好きな作品を聞いてみると、視聴経験数では4位だった「美しい彼」が1位に躍り出る結果に。
他の人気俳優、高額予算が投入された作品より支持率が高くなっています。

Q4で選んだ作品が好きな理由を聞いてみると「役者の演技がよい」が圧倒的となっており、続いて「脚本がよい」、僅差で「役者の顔がよい」という結果となりました。
脚本やイケメン俳優の起用も重要な要素ですが、やはり原作の世界観を体現できるか否かが作品の命運を分けそうです。

また、アンケートでは趣味に合わなかった作品とその理由も記載して頂きましたが、こちらも「役者の演技が好みじゃなかった」という意見が最も多く見られました。
実写化BL作品の評価は役者さんの演技で決まると言っても過言ではありません。

Q.BL実写作品に出演した中で一番好きな役者を教えてください

実写化作品に出演した役者さんの中で好きな方を聞いてみると、『美しい彼』『チェリまほ』でそれぞれ主演を務めた4人が上位を独占!
さらに、好きになった役者さんを「作品で初めて知った」という方が多数を占めており、元々ファンだった訳でもないようなのです。

実写化作品を最初から役者目当てで視聴するユーザーは少なく、人気俳優をキャスティングしたからといってドラマの評判や満足度に必ずしも繋がるわけではなさそうです。

Q.実写化してほしいBL作品は?

実写化してほしい作品ではマミタ先生の『40までにしたい10のこと』が最も多く、次いで夏野寛子先生の『25時、赤坂で』が票を集めました。

『憂鬱な朝』を除いて現代の日常モノという共通点があり、がっつりエロでもなく……実写化してもあまり違和感のなさそうな実現性の高い作品が並んでおり、回答者の本気度がうかがえます!
このnoteを目にした関係者の皆さま、是非ご一考を…!

ラブシーンはどこまで必要なのか、考えてみる

次に、BLファンが実写化BLに求めるエロについて考えてみたいと思います。

見目麗しい男性が妖艶に絡み合うようなシーンはやはり魅力的であり、キャストやストーリーが多少弱かったとしても客寄せの役割を果たすことができると思われます。
しかし、だからと言ってエロに全振りしてしまうと逆効果。一時的に視聴者は伸びるかもしれませんが、作品の熱烈なファンにはなってくれないでしょう。

一方で、中途半端なエロも求められていません。
改変による生半可なラブシーンは原作ファンを冷めさせてしまうし、ライト層にも響きにくくなってしまいます。
むやみやたらなエロではなく、要所となるシーンに限定したほうが良いと考えます。
また、絡みや裸のシーンはなくても指先や首筋、腕の血管などの男性らしいパーツを追うことでエロさを追求することもできます。
むしろ、そうしたフェティシズムのほうが求められていると言っても過言ではないかもしれません。

『きのう何食べた』などの日常ほのぼの系は例外として、恋愛メインの実写BLをやるのであればキスは必須!これは断言できます。

『チェリまほ』は話題性も抜群でアンケートからも分かる通りユーザー人気上位のドラマでしたが、原作にはあったキスシーンが無かったことで残念がる視聴者が続出しました。
事務所や役者側の都合など最終回が放送された後のSNSを見る限り、キスシーンはなんとしてでも入れるべきだったのでは…。
ともすれば、『おっさんずラブ』のように(またはそれ以上の?)持続的かつ高い熱量の人気を勝ち得ていたはず。

ファンサの大切さが認識され始める

実写BLは原作の力も大切ですが、それ以上に出演者のファンミーティングがより重要になってきました。

ファンミーティングは韓国で人気となり、それがタイ、中国に広がっていきました。特にタイBLファンミーティング(ファンミ)では二人のいちゃいちゃ感、ショー的な部分が突出しています。(もはやファンミのほうが"本体"か思ってしまうぐらい…)
日本では、「仕事とプライベートはあくまでも別物」という考えが支配的かと思いますが、タイではプライベートとドラマの境界をあえて曖昧にして売り出しています。そんなプロモーションは舵取りがとても難しいのですが、消費欲旺盛なコアファンの生産にとてつもない効果を上げています。

そして日本でも若手で戦隊モノ、舞台を中心に出演している俳優がメインとなるドラマのイベントでは、その概念が変化が起こり始めています。
2023年9月に行われた樋口幸平さん 増子敦貴さんが主演するドラマ「体感予報」の「ファン感謝祭」でこの変化を感じました。「ファン感謝祭」はタイ的なファンサ主体だったこともあり、二人のいちゃいちゃサービスに会場は大いに沸きました。
このイベントによりファンの濃度はさらに上り、コンテンツが強固になったと思います。
これまで多かったプロモーション主体の舞台挨拶系イベントから、ドラマ本体と同等かそれ以上の価値を生み出せるファンサイベントへの変化の可能性を感じさせるものでした。

俳優業を志す方々が、この傾向を受け入れるかというと難しい部分もあるかもしれませんが、今後の流れとしてファンサを求められる傾向がより強くなるでしょう。

まとめ

商業BL原作ファンの多くは実写化よりアニメ化を望んでいます。
しかし、アニメは予算と日数がかかる上に今までBLに関心がなかった新規層への影響力は実写に比べて劣ってしまうこともあり、今後のBL原作のメディア化の中心は実写になると予想されます。

日本の『おっさんずラブ』や中国の『陳情令』の例からも分かるように、実写BLは他ジャンルより人気の持続力が高く、放送配信から数年経っているにもかかわらず未だにファンの熱量が高い傾向にあります。
それだけ大ヒットコンテンツを作れるポテンシャルが高いジャンルとなるので、ソシャゲのようにコンテンツ運営を意識した作品作りが必要と考えます。
今後はタイのように撮影前にワークショップ(メイン2人が演技の練習をしたり役作りについて話し合うこと)を行ったり、韓国のように海外に向けたファンミーティングやSNSでのライブ配信、グッズ展開など他国で成功している事例を取り入れたこれまでと異なるドラマ作りが求められます。

声優業界が、声だけで生きていくことが難しくなったように、俳優業界も演技だけで生きていくことは、これから難しくなると考えています。
おそらくそのきっかけを作るのがBLドラマであり、賛否両論巻き起こしながら、時代をリードしていく可能性を大きく感じています。


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