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欧州ネイションズリーグが面白すぎる!②(傷ついた"Les Bleus"と名将ディディエ・デシャンの魔法、プレミアリーグサッカーの限界)

サッカーの監督で名将って色々いるけど、選手上がりで、選手としても偉大だった人で名将と呼ばれる人にも色々いて、わたしの推しのイタリア代表のロベルト・マンチーニ監督もまあそのカテゴリーだけど、彼は明確に戦術家です。

一方、こちらのエントリーでも紹介したフランス代表のディディエ・デション監督は同じ名選手でもちょっと毛色が違って、

日本によくいる戦術厨のサカオタ(多分、ウイニングイレブンとかいうゲームから海外サッカーにはまったタイプ)からは、
「あんなタレント集めてEUROでベスト16敗退とかダッセェ!」
「ジルーワントップでW杯獲ったのにベンゼマに代えるとかマジ分かってない。ポストプレーガー、献身的な守備ガー」(ジルーは2018年W杯奇跡のノーゴール笑!)
「俺が監督したほうが明らかにマシ」
とか言われてるっぽい。

マジでナメんなよと。ディディエ・デシャンをナメんなよと。
貴様にポグバ、ベンゼマ、ムバッペ、グリエズマン、ラビオetcetcの俺様軍団をまとめられるのかと。(突然の本田△口調)

栄光の"Les Bleus"はその非凡なタレントにプライドも持っている

フランス代表はまさにワールドクラス、偉大なる非凡、選りすぐりのタレント揃いで本人たちもその自覚ありまくりで基本凡人の言うことなんかナメプだし、

何しろ性格もフランス人(唯我独尊)だから、フランス代表の監督なんて、ディディエ・デションかジダン(二人とも国民的英雄)しか無理!

そもそも、フランスの代表監督には『戦術家』の概念がない

フランスの代表監督ってcoachともmanagerとも違う

sélectionneur(選考員みたいな意味)

って呼ばれてるんだよね。

イタリアやスペインの監督は選手という材料を使って料理をするシェフ

みたいな位置付けだけど、フランスは

既に出来上がってるビュッフェの料理を盛り付ける役みたいなイメージ

なのかも。

欧州はリーグのスケジュールもタイトで集まって次の日試合!
みたいなケースが多いから、戦術を仕込むのが物理的に無理!というのはあると思う。
あと、ここだけの話、アフリカ系の選手(というか、考える前に体が動くタイプの身体能力特化型の選手)が多いと戦術を仕込もうとすると混乱する(場合がある)気がする。
「戦術、戦術、戦術!」
って言い過ぎるとどう動いていいかわかんなくなってワンテンポもツーテンポも遅くなり、結果的に彼らの長所であるスピードとか反応の速さが死んでしまう
んだよね。

ロストフの14秒が起こった準決勝。

めちゃめちゃ面白かったネーションズリーグ2021準決勝、ベルギー対フランス、ハーフタイム前に2-0でベルギーがリードからフランスの怒涛の巻き返しで、逆転劇が起こりました。

本当、めちゃめちゃ面白かったのでまずは観て欲しいんですけど、まずはハイライトでどうぞ。(上がフランス版、下がベルギー版)

ちなみに、ロストフというのはロシアW杯の決勝トーナメント初戦、ベルギー戦で日本が後半に得点し、2-0でリードしながらアディショナルタイムのコーナーキックから14秒のカウンターで逆転負けしたという競技場の名前らしい。
2点リードした時点で主将の長谷部選手に
「どうしたらいいですか?(先制しましたけど、戦術変更はありませんか?)」
ときかれた当時の日本代表監督は、
「このままでいい、このままでいい、このままでいい」
って三回繰り返してグダグダになった挙句、負けた後に
「ロストフの空を忘れるな!」
って言ったらしい。(何故か無策がいい話風になっている。)

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今回はベルギーがロストフの日本の立場だった

立ち上がりは両チーム共良くも悪くもなかった(相カウンターでとにかく展開がめちゃめちゃ速かった)んだけど、カラスコの1点目が入った3分後にルカクがスパンと気持ちのいいゴールを決めてベルギーはいい雰囲気、フランスはいやーな雰囲気になり、なんとか凌いでハーフタイムに突入しました。
ストライカーがゴール決めるとチーム全体がノるのは当然。ダブルエース(?)のアザールは終始ヘロヘロだったけど、ルカクはノってたと思う。

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相カウンターの合間に中盤真ん中でポグバとラビオがなんとも言えない表情で呆然と並び立って居るのを見て、
「ポグバポジションしっかり守ってるなー」(ボール持ってる時のポグぴは割と自由な印象)
とかは思わず、
「この二人絵になるなー」
って思ってました。(マジで絵になる↓)

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190cm・90kgのポール・ポグバと、相棒の188cm・74kgのアドリアン・ラビオ。
公開処刑マシーンのポグバに見劣りしない長身で同じくらい(距離、スピード共に)走れるってすごい人材だわ。
ラビオってそもそも暗い雰囲気ある(ポグバが派手なのもある)けど、この日は特に幸薄そう↓に見えて

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「うわぁ、しんどそう。大丈夫かな?」
って思ってたら、試合後コロナ陽性で次の試合出られなかったというオチつき。
若いから大丈夫だと思うけど、マジ無理しないでほしい!

ポール・ポグバ、ボランチ大覚醒卍

前半はツレ(違う)のラビオと一緒に落ちてたポグバさんが、後半大覚醒!
カウンター・エンジンのデブロイネがバテてきて
まったりパスサッカー
(これマジ危ないね)
モードになったベルギーからボールをカツアゲし始めます。
なんと、タックルであの!ルカク(190cm・100kg!)から
「アッーーーーーーー」
と言う間にボールを強奪し、ポグぴのおかげでわたしは新しい性癖に目覚めたよ。。

ポグバって
「よっしゃイケる〜〜〜」
みたいな時はミドルシュート打ってディフェンダービビらせたり、やる気見せるけど、基本的に
「守備の仕方わかんなーい」
っていう、典型的(?)なアフリカ系のアタッカーにありがちなタイプ(変に守備にやる気を見せると「え〜こんな感じ?ファウル?ヤダーーーー」ってイエローカードになる←イタリアのケアンさんとかそんな感じ)と思ってたけど、めっちゃ守備する(&上手い)やん!

ベルギーのコーチをしている元フランス代表ティエリ・アンリパイセンも、ポグバの守備のボロさに

「ポグぴにボランチは無理ぽ。左のインサイドハーフがベスポジ卍」

って言ってたらしい↓んですが、ネーションズリーグのポグバはマジでボランチ覚醒卍してた!

わたしは最近チャンピオンズリーグをちょっと見始めた程度でほぼ代表戦しか見ないんだけど、フランスメディア(しかもレキップ!)も
「ポグさんSUGEEEEEEEEEE!!!!!」
って思ったようです↓

Paul Pogba après la remontada des Bleus : « J'espère que vous pourrez voir ce qu'on s'est dit dans les vestiaires »
Les Bleus復調後のポグバさん「ロッカールームで言われたこと、皆さんにも見られたら良かったね」

ベルギー戦後半のポグさんはカツアゲするだけじゃなく、運びもクリアミス拾いも、止められちゃったけど自慢のミドルシュートも炸裂する大ブレイク!

ポグバが大ハッスルしている間、ラビオは広々とした真ん中を一人で走り回っていました。(通常運転)
ポグさんがポジション放棄してラビオが怒ってる写真が有名だけど、この日のラビオは夢中で走ってた。(この子は本当によく走るいい子だよ…細すぎて可哀想…)

ポグバは決勝でも絶好調で、縦横無尽にカツアゲマシーンしたり、グリエズマンとフリーキックのフェイント合戦したり、カツアゲしたボールをダイナミックな(190cmのドリブルはマジでダイナミック)ドリブルで運んでアシストのアシストで得点にも貢献!
走り回ってるのに全然へたらないし、ポグぴが覚醒した今、フランスのW杯連覇は堅いと思いました。

フランス国営放送でのミックスゾーンインタビュー

ネーションズリーグの準決勝ベルギー対フランス、面白すぎたのでわたしはオーストリア国営放送とフランス国営放送の二つのチャンネルで二回観た(二回目はだいぶ端折って観たけど)のですが、フランス国営放送の中継では、レポーターからディディエ・デション監督へのミックスゾーンインタビューがありました。

前半終了時:
レポーター「ディディエええええ( ;  ; )泣!どうしましょう!2-0です!もうLes Bleusの栄光は終わりなのですか?( ;  ; )」
ディディエ「ちょっと慎重に行きすぎたかな…カラスコにゴールされて動揺している間に押し込まれて、ルカクに2点目を取られてしまった。ルカクは、いいシュートだったね」
レポーター「どうするんですか?フォーメーションは変えますか?どんなフォーメーションに???ディディエエエエ〜〜〜/ _ ;」
ディディエ「フォーメーション?変えるかもね…まあ観ていてよ」

発狂して早口になったアナウンサーが詰め寄ってきても全然動じないデション監督。

試合終了時:
レポーター「ディディエ〜〜〜〜〜勝った〜〜〜〜勝ちましたね( ´ ▽ ` )ノ」
ディディエ「さっきと全然テンション違うやん?笑」
レポーター「めっちゃいい試合でした!前半と全然動きが違った。ハーフタイムに何を言ったんですか?」
ディディエ「みんなが消極的で、自信を失っているように見えたから、少し話したんだ。 EUROでのスイスとの敗戦を引きずっているようだったからね」
レポーター「なんて言ったんですか?」
ディディエ「『自信を取り戻しなさい。君たちは強い。世界王者だろう?』ってね」
レポーター「なる」
ディディエ「前半終了後、君たちはこの世の終わりみたいな顔をしていたが、私はちっとも心配していなかったよ。未だ45分もあったからね!

デション監督率いる一軍としては、まさかのスイス戦の敗北だけだけど、オリンピックに来てた有象無象の偽Les Bleusは日本(フランス人的には、アジアのクソザコだと思ってる)に4-0で負けて予選リーグ敗退ですからね。
国営放送のアナウンサーが、
「国辱だ!!!!!!!」
って絶叫
してたけど、ぶっちゃけ「ざまぁああああ」って思いましたわよ。

でも、スイス戦で延長戦のPKを失敗して戦犯になっちゃった若きエースのムバッペが今回、PKを決めて笑顔を見せたのは本当に良かった。
デション監督も

ディディエ「キリアンがPKを決めて良かった。アディショナルタイムに決勝点を決めたテオ・エルナンデスも攻守ともに素晴らしかった」

って言っていたし。やっぱりエースが調子悪いとチームの雰囲気悪くなるし調子上がらないよね。

息をするようにスーパープレーをする最高のベンゼマ

エルナンデスは確かベンゼマのアシストだったと思うけど、中盤ポグバ〜ムバッペ〜ベンゼマの連携もすごく良くて、ベンゼマがゴール前で毎回スーパープレーするのがマジで楽しすぎる。
ベンゼマのインスタライブで

インスタフォロワー「ジルーとあなたはどっちがいい選手ですか?」
最高のベンゼマ「笑笑!F1とゴーカートは違うでしょ?はい次!」

っていうやりとりがあったらしいんだけど、

ゴール前に突っ立ってるジルーのワンテンポ遅い反応見てると、W杯優勝国のセンターフォワードの器じゃないなぁ…と。
ただ、デション監督には気に入られてるし、
「ジルーを呼べなくて残念」
と言われているし、↓いい選手には間違いないので、格下との欧州予選とかにまた来てもらえばいいと思う。

いい選手には間違いないけど、ワールドクラスのスーパースターではないんだよね…。ジルー師匠…。

ベンゼマをBallon d'orに推す声

最高のベンゼマは(いうても最高なので)、EUROでも結構活躍してたとは思うんだけど、チームがベスト16で敗退してしまったのでジルー(ゼロ得点だけど一応W杯優勝時のワントップ)お払い箱にしてのベンゼマ起用そのものについて非難されたりもしていたけれど、今回ネーションズリーグでの

ベンゼマの大活躍&スーパープレー&連携もバッチリでエースのムバッペまで調子上がる!

を受けて、フランス語のフットボールYouTube界隈では

ベンゼマにBallon d'orを!

の声が高まっているようです。
マクロンのゴリ推しマジ卍(デション監督に追放されていたベンゼマを起用するようにと、大統領直々にフランスサッカー協会への圧力があったらしい)
マジで、マクロン見る目あるわ〜〜

オーストリア国営放送の試合後寸評:「ベルギーはカウンターしかない」

有能な怠け者ポグぴが大覚醒したのがフランスの勝因だとしても、ベルギーの戦犯はエースなのにヘロヘロでいいところがなかったアザールでも、ゴール前に地蔵してたルカクでもなく、ベルギー代表のエンジンであり心臓である有能な働き者、デブロイネだったなぁというのがわたしの感想です。

オーストリア国営放送:
A「いや〜、ベルギー代表はまたタイトルを逃しましたね」
B「初タイトルいけるかなと思ったんですが、難しかったですね」
A「フランスは良かった。ムバッペもPK入れたしね」
B「フランス、スイスに負けたし( ^ω^ )もうダメかと思ったけどやっぱり強いね」
A「というか、ベルギーはカウンターはいいけど、ボール持ったらマジでグダグダ
B「それな」

『ロストフの14秒』だ、スーパーカウンターアタックだって言うけど、

ベルギーは結局カウンター(しかない)
∵戦術的に未熟で、ポゼッションに難があってパスサッカーでは崩せない

んだなと、試合後汗だくで放心しているデブロイネを観て思ってしまった。
彼は頭もいいし、運動能力も高いし、フィジカルも弱くはない。スタミナも並みの選手以上にはあると思うけど、彼も人間で、90分間ロストフの14秒を繰り返せるような超人じゃない
覚醒ポグバがボールカツアゲマシーン化出来たのも、ベルギーのポゼッションにかなり大きな難があったからだなーと素人目に見ても思ったので。
甘いんだよね。
ポジション取りも、パスコースも。

プレミアサッカーの権化、デブロイネは自分の脚を食べるタコ

フランス代表を"les Bleus"と呼ぶのと同様、ベルギー代表は"Red Devils"って呼ばれるけど、止まれないプレミア・ロケット・エンジンを積んだデブロイネは自分の脚を食べるタコだなと思いました。
タコって、Sea Devilsとも言うよね?(言わないっけ?)

頭脳・身体・技術全てに卓越した才能を持ち、ベルギーの中心にいるデブロイネだけど、彼は(彼の特性なのかプレミアリーガーとしての習性なのかわからないけれど)チーム全体をカウンターに誘導して、エンドレス・カウンターのカウンター合戦(プレミアリーグ・サッカーのイメージ。プレミア知らんけど笑)にしてしまう
こんな消耗の激しいサッカーは長くは出来ないし、当のデブロイネももう90分保たない。
結局、彼は自分の選手生命を縮めてるんだよね。
エースのアザールが潰れてしまったのも、プレミアリーグ(2019年までチェルシーにいたらしい)で消耗しちゃったからなんだろうなと。

ベルギーは、もうタイトルは獲れないの?

悲願の初タイトルを懸けたEURO敗退(優勝したイタリアに敗北)で
「2022年カタールまでベルギーは保たない」
って思ったし、せめてネーションズリーグとかいう訳わかんないタイトル(前回はクリロナのポルトガルがごっつぁんしてる)だけでも取って欲しかったけど、もう無理なんだなぁって思った( ;  ; )

 スペイン「AS」紙は「アザール、ベルギーの一時代の終焉。ロベルト・マルティネスの将来も宙ぶらりん」との見出しを打ち、「ベルギー史上最高のグループはEURO2020後に解体される」と報じた。
 特に最終ラインはDFトーマス・フェルメーレン(ヴィッセル神戸)が35歳、ヤン・フェルトンゲン(ベンフィカ)が34歳、トビー・アルデルヴァイレルト(トッテナム)が32歳と主力の大半が30オーバーで世代交代は必須。ともに34歳のFWドリース・メルテンスとMFアクセル・ヴィツェルらの今後も不透明で、加えてイタリア戦の敗北でマルティネス監督の立場も危ぶまれている。今後、代表チームの顔ぶれが刷新される可能性がありそうだ。

ちなみに、ヴィッセル移籍したフェルマーレンさん、今回は出てなかったです。(代表卒業したくて極東に移籍した疑惑笑)

素晴らしいタレントの揃った華やかなチームだから、本当に惜しいしつらい。

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花璃。

海外住み主婦のゆるオタ生活について時々発信します。