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ゴールドが値上がりしている背景を考える

ゴールド価格が内外で史上最高値を更新

 ここにきて、金(ゴールド)価格の上昇スピードが加速してきているようです。田中貴金属が発表した本日(3月7日)の金小売価格は1グラム11360円(税込)と史上最高値を更新しました。ゴールドの取引は欧米が主導しており、特にニューヨーク商品取引所(COMEX)の先物取引の価格が事実上の国際相場になっています。ニューヨークの金相場は、3月6日に一時1トロイオンス2160ドルを突破して、昨年12月につけた最高値(2152.8ドル)を約3ヶ月ぶりに更新しました。
 ゴールドは、過去の値動きを見ると、国際紛争など地政学リスクが増大した時や、金融市場が混乱した時などに急上昇する傾向があります。最近だと、コロナ禍の初期段階で株式市場が動揺した時にゴールドの価格が急上昇したことは記憶に新しいところでしょう。今は、ウクライナやガザ地区での紛争が長期化するなど地政学リスクはそれなりに高いと言えますが、株式市場が好調な時にゴールドが新高値を取るという現象に違和感を覚えている人も少なくないでしょう。
 ゴールドはインフレヘッジに威力を発揮すると言われ続けてきたものの、インフレが進行すると金利が上昇するため、利息を生まないゴールドには投資対象としての魅力が下がるというジレンマがありました。インフレ対策には有効だけど、インフレ抑止の目的で金利が上がるなら、債券など利息が得られる金融商品の方が魅力的に映るからです。日本の金小売価格は円安効果もあってここ数年は大きく上昇しましたが、ドル建ての金価格は意外に上がっていません。しかし、ようやくドル建ての金価格も史上最高値を更新して、ゴールド上昇に拍車がかかったような気がします。
 ゴールドが上がっている背景としてはいくつかの要因が考えられますが、やはりインフレ、つまりドルを中心とした通貨の価値下落が必至と考える投資家が増えたことが大きいのではないでしょうか。インフレ必至なら、資産の一部を現物資産にシフトするのは理にかなっています。ゴールドのような現物資産は、株式や債券など伝統的な金融資産と区別してオルタナティブ(代替的)資産と呼ばれます。
 ゴールドの価格はすでに高くなっていますが、個人的には、ゴールドはまだまだ「買い時」だと思っています。有事というほどの混乱はなく、株式市場がこれだけ好調なのにゴールドも上がっているということは、今後、ゴールドが本領を発揮するフェーズが到来すれば、ゴールドはさらに上昇する可能性が高いからです。私はアンティークコインにも投資していますが、アンティークコイン=貴金属という認識はありません。ゴールドやシルバーについては、地金など別の形で保有しています。ただし、地金は収集品ではありませんので、コレクタブル資産には含まれません。
 都市伝説だと笑われるかもしれませんが、ゴールドの相場はこれまで不当に低く抑えられていたのではないかと思っています。外貨準備としてゴールドを最も多く保有している国はアメリカですが、世界最大の産金国は中国です。ロシアも金本位制のような通貨政策を提案するなど、ゴールドの価格を上げたい意図が見え隠れします。ゴールドの価格が上がりすぎると困る国や勢力があってもおかしくないような気がします。

ゴールドは現物資産投資の第一歩

 国内の金小売価格は円安の影響もあり、海外に比べても大きく上昇しています。もちろん、日本人がゴールドを買い込んでいるから金価格が上昇しているわけではありません。国内価格は、あくまでもニューヨークの相場と為替相場で決まります。
 日本人はゴールドの価格が上がると、安い時に買った地金や金貨を売り急ぐ傾向があります。過去、金価格が急上昇した局面では、売りたい地金や金製品を手にして貴金属店の前に朝から長い行列を作る姿がよくニュースで報道されたものです。しかし、昨年以降、この傾向に変化が出てきているようです。
 国際調査機関ワールド・ゴールド・カウンシル(WGC)によると、2023年の国内ゴールド現物(地金や金貨など金製品)の取引は2.3トンの売り越しに留まりました。売り越し量は、前年2022年の11.2トンに比べると大幅に減少しています。2023年は8月に初めて1グラム1万円を突破するなど、2022年より2023年の方が金相場が上昇しているにもかかわらず、売り越し量が大幅減少しているということは、売る人がそれなりにいる一方で、買っている人も少なくないことを示しています。
 金価格が世界的に史上最高値を更新する中で、ゴールドを買う人が増えているのは、株式などの金融資産から現物資産に資金をシフトする動きがようやく本格化してきたと見てもいいのではないでしょうか。日本では、古くから資産を、現金、土地(不動産)、株式に分割する「資産三分法」が信奉されてきました。この3つのうち、不動産は現物資産に分類されますが、購入の際にローンを組むことが多いので、実質的には金融市場の影響をかなり受けます。日本において、ゴールドという現物資産に投資するというのは、比較的新しい考え方というか手法だと言えるかもしれません。
 ゴールドの現物は安全資産としての強みがありますが、(取引所で売買される金融商品に比べて)利益に対する税率が高くなる、一定金額以上の売買は税務署に把握されてしまう、などのデメリットもあります。近年、ゴールドを買う人が増えたのは、「不動産以外の現物資産にも分散投資したいけど、現物資産でゴールド以外の選択肢が思いつかない」という人が多いからではないかと推測します。
 現物資産の中には、私が投資しているアンティークコインの他にも、美術品、切手、高級腕時計、ヴィンテージウィスキーなど、すでに資産価値があると広く認識されているコレクタブル資産があります。最近になって、盛んに売買されるようになったものとして、トレーディングカード、コミックス、ゲームソフト、アニメ原画などもコレクタブル資産として徐々に人気が高まっています。
 コレクタブル資産は、それ自体を好きになれない人には向いていません。好きになれないモノに投資してもうまくいくとは思えませんが、コレクタブル資産の中で好きになれそうなモノがあれば、現物資産の一つとして検討してみるのもいいでしょう。
 私が取り組んでいるアニメ原画は、価値基準が十分に確立されていないため、将来たいして値上がりしないというリスクはあるものの、現時点で非常に安く購入できる点が魅力です。資産の一部をハイリターンが期待できる新興のコレクタブル資産に振り分けるのは、かなり有力な戦術だと思っています。

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