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アンティークコインとアニメ原画の共通点

アンティークコイン投資を始めて気づいたこと

 私は2021年からアンティークコイン投資を開始しました。それまでほぼ株式だけで資産運用していましたが、金融資産に依存することにリスクを感じて、実体経済の影響を受けにくい現物資産へ資金をシフトしようと考えました。その際にシフト先の候補としてあがったのが、コレクタブル資産の一つであるアンティークコインでした。学生時代に日本の古銭を少し集めていた経験があったので、アンティークコインに投資することには抵抗があまりありませんでした。
 アンティークコイン投資を開始するにあたり、将来性や安全性などの要素を総合的に考慮して、投資対象にするコインを19世紀のイギリス銀貨に絞り込むことにしました。正確にいえば、有名な彫刻師ウィリアムワイオンが手掛けた1824年から1887年に発行された銀貨だけを集めることにしました。アンティークコインはマニアックな世界ですので、収集対象を広げすぎると知識の習得が追いつけないと考え、絞り込むことにしたのです。
 アンティークコインの収集は順調に進んでいると甘い自己採点をしています。コレクタブル資産は、とにかく自分が好きなものを集めて長期保有するのが基本戦略ですから、このコインなら安心してずっと持っておける、と厳選したコインだけを買うようにしています。ちなみに、アンティークコイン投資を開始して4年目に突入しましたが、これまでに購入したコインは保有したままです。
 これまで1枚も売らずに持ったままなのは、レアコインは流動性が低いため売買時の手数料率が高く、購入して少なくとも3年から5年は寝かさないと手数料負けしてモトが取れないためです。アンティークコインは頻繁に売買して儲けるようなものではなく、じっと長期保有して価値が上がるのを待つという感じです。一般の人から見れば、投資というよりは資産保全のイメージに近いかもしれません。
 アンティークコイン投資は長期戦ですし、まだ開始して4年目ですので、当然ながら今後も継続して進めていく予定です。現時点では、アンティークコイン投資による利益は一切ありませんが、投資そのものには満足してしています。その一方で、アンティークコイン投資には不自由な点も感じており、もっと自由に売買してコレクションを増やしていけるようなコレクタブル資産はないかと考えたところ、以前にハマっていたアニメ原画のことを思い出したのです。
 コレクタブル資産の利点を改めてピックアップしてみると、アニメ原画は優秀なコレクタブル資産の条件をことごとく満たしていることがわかりました。そこで、以前は純粋な趣味として集めていたアニメ原画を、今後はコレクタブル資産として意識的に投資することに決めたのでした。アニメ原画には、コレクタブル資産として大きな弱点もあります。それは、価格帯が低いという点です。現時点で安いということは、アニメ原画に資産価値があると認識している人が少ないことを示しています。価格帯が低いということは、まとまった資金を運用するのには向いていないということになります。

アンティークコインとアニメ原画の共通点

 私は、アンティークコインとアニメ原画を同じコレクタブル資産ととらえています。唯一ともいえる違いは、価格帯だけです。私が収集対象にしているイギリス銀貨は、1枚数十万円から上は1000万円と幅があります。しかし、投資に有望なレアコインに絞るとなると、どうしても単価は200万円から500万円くらいがボリュームゾーンになってしまいます。その点、アニメ原画なら、数百万円から1000万円以上で取引されることもある宮崎駿さんの直筆原画のような超高額品を除けば、1カット数千円から20万円くらいの範囲でかなりいい原画が購入できます。
 アンティークコインとアニメ原画の共通点は、趣味で集めている人からのニーズがなければ、それ自体には物質的な価値はほとんどないことです。アンティークコインの多くは金や銀などの金属で作られていますので、「価値がゼロになることはないから安心できる」と言われることもありますが、私はアンティークコインに素材的価値があるとは思っていません。
 たとえば、イギリス銀貨としておそらく一番有名な「ゴチッククラウン銀貨」は、アンティークコインでは大型銀貨の部類に入り、品位92.5%の銀28.28グラムで作られています。つまり、約26グラムの純銀が含まれているわけですが、現在の純銀価格で計算しても、せいぜい3300円ほどの素材的価値しかありません。しかしながら、私の保有しているゴチッククラウン銀貨(61グレードと鑑定済)は市場で200万円以上で取引されています。
「純銀として3300円の価値があるから安心だ」と思って、このコインを200万円で買う人はいないでしょう。アンティークコインもアニメ原画も、価格のほとんどが、コレクターが認識する歴史的価値であり、芸術的価値、資料的価値なのです。アンティークコインであれ、アニメ原画であれ、コレクタブル資産のほとんどは、世界経済が破綻して無秩序な社会、いわゆる「北斗の拳」の世界が到来すれば無価値になってしまうでしょう。
 アンティークコインの過去の値動きを調べてみると、興味深いことがわかります。アンティークコインは、アメリカで1986年以降、第三者鑑定機関による鑑定が普及したことで、1989年に空前のバブルを経験しました。1989年にバブルが崩壊して、その後、価格は低迷しましたが、相場反転のきっかけとなったのがインターネットの登場です。インターネットにより、コレクターや投資家がオークション落札結果をほぼリアルタイムに知ることができる環境が整ったことで、アンティークコインの価格は1995年を底にして回復に向かいました。バブル崩壊の後遺症で沈んでいたアンティークコイン市場を救ったのがインターネットなのです。
 実は、インターネットはアニメ原画の相場にも大きな影響を与えました。私が原画収集を開始した1990年代終わりは、インターネットはすでに普及しつつありましたが、アニメに関する情報はなかなかインターネットでは収集できませんでした。その後、ネット上で収集できるアニメ情報が充実するにつれ、アニメ作品やそれに関わった制作スタッフやアニメーターのことが比較的簡単に調べられるようになったことで、原画に興味を持つ人も徐々に増えて行きました。
 私は原画の購入にヤフーオークションを以前から活用していますが、原画に対する評価は2000年当時と比較すると雲泥の差があります。当時数千円で購入できたような原画が、今では数万円でも購入するのが難しくなってきています。インターネットで過去のアニメ作品が配信されるようになったことも、過去の作品の原画の価値上昇に大きく貢献していると思います。
 アンティークコインが大きくブレイクするきっかけになった鑑定制度については、また機会を改めて書きたいと思いますが、いずれにしても、私にとっては、アニメ原画は、アンティークコインに比べて出遅れているコレクタブル資産の一つ、という認識で積極的に集めています。

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