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私がアニメ原画にハマった理由とは

アニメ原画が簡単に入手できた2000年前後

 私はアニメ原画の収集にハマっています。アニメ原画と聞くと、セル画や原作マンガの原稿をイメージする人もいるかもしれません。ここでいう「原画」とは、アニメーターと呼ばれるクリエーターが薄手の作画用紙に鉛筆で描いたドローイング(線画)のことです。原画や動画、セル画などアニメ制作の過程で生み出される素材は「中間制作物」と呼ばれ、アニメが完成して一定期間保管された後は、産業廃棄物として処分されるのが一般的でした。
 私がアニメ原画の収集を開始したのは1990年代の終盤だったと記憶しています。アニメ原画にはもっと前から関心を持っていましたが、1990年代の終わりになって経済的な余裕が少し出てきたので、小遣いの範囲でアニメ原画を買い始めたのです。その頃は、積極的にセル画や原画を販売する制作会社もありました。おそらく制作会社にとって、セル画や原画など中間制作物の販売は、利益目的というよりもファンサービスの一環だったのでしょう。当時は原画を集めるファンは極めて少なかったため、今から思うと驚くような安い価格で購入することができました。
 コレクションが一番充実したのは2000年前後でした。当時は大阪に住んでいたので、東京のアニメショップを訪問する機会は限られていましたが、ヤフーオークションを活用して手当たり次第に好きな原画を買い集めていました。ところが、2000年を境に新作アニメの原画がなかなか市場に出て来なくなりました。仕上げ(彩色)工程のデジタル化が進み、セル画が一斉に姿を消したのがちょうどこの頃です。製作委員会という仕組みが普及したことも、中間制作物を外部に払下げしにくくなった要因の一つなのかもしれません。
 仕事が忙しくなったこともあり、2005年以降原画の収集は開店休業状態になりました。2000年前後に収集した大量の原画は大切に保管していましたが、忙しい日常に追われて、原画コレクションを鑑賞する機会も大きく減ってしまいました。当時はあくまでも趣味で集めていたので、アニメ原画を転売するという発想はありませんでした。まして、アニメ原画に資産価値があるとは思いもしませんでした。

コレクタブル資産への投資を意識し始める

 私は長い間、株式投資を続けてきました。スタートした時期がよかったこともあり、幸運にもそれなりの利益を上げることができましたが、運用資金を株式に偏らせることにリスクを感じたため、2021年から現物資産に資金の一部をシフトし始めました。その際に投資対象として選定したのが、コレクタブル資産として将来性があると判断したアンティークコインでした。
 金融資産の代表格である株式から、形のある現物資産にシフトを急いだ最大の理由は、これからインフレの進行が避けられないと判断したことです。株式市場は現時点では好調を維持していますが、今の高値圏はバブルであると認識していて、いずれは大きな調整局面が来ると予想しています。金融市場が大きな混乱に見舞われても、その影響が少ない現物資産、特にコレクターの実需に支えられたコレクタブル資産なら資産を保全できるのではないかと考えたのです。
 コレクタブル資産の最大の魅力は、自分が好きなモノを集めているうちに、気づけばそれなりの資産になっているという点です。アンティークコインは、世界的なコレクターも多く、価値基準もある程度確立されているので、安全性が比較的高い現物資産です。その一方で、すでに資産価値が多くの人に認められているので、将来値上がりが期待できそうなレアコインの価格はすでに高値になってしまっています。コレクター数が多いので下値は堅いものの、上昇ペースは非常にゆっくりしており、短期で儲けるという感じの投資ではありません。
 なによりアンティークコインは単価が高いため、1枚買い増すにも予算の確保などの制限が出てきます。投資を意識する以上、投資に適したコインであるかどうかを慎重に検討するのは当然ですが、「純粋に集めて楽しむ」という域にはほど遠い印象です。
 資金力の乏しい私のような小市民でも、投資をあまり意識せずに気軽に集められて、気がついたら結構な資産になっていたというようなコレクタブル資産はないのでしょうか。ふと思い出したのが、2000年前後に熱中して集めていたアニメ原画のことです。2021年以降、いろいろと市場を調査してみて、アニメ原画こそ、私に最適なコレクタブル資産だと気づいたのです。
 そこで、小遣い程度の資金で気軽に集められて、気づけば資産になっていることが期待できるアニメ原画も投資のラインナップに加えることにしました。現在では、株式、アンティークコイン、アニメ原画の三本立ての投資をエンジョイしています。株式にたとえるとすれば、アンティークコインは株価が安定している成熟した大企業の株式、アニメ原画は成長性や材料によって株価が大きく跳ねることもある新興・ベンチャー企業の株式、といった感じでしょうか。

決してアニメ原画を買い煽りたいわけではありません

 過去に趣味で集めてきたアニメ原画を投資対象にすることにしたのは、最近になってアニメ原画の評価が急激に上がったためです。2021年以降、私は過去に集めた原画の一部を市場調査のためにeBayに出品してみました。すると、自分でもビックリするくらいの高値で売れたのです。私が原画を収集開始して20年以上が経過していたので、多少は価値が上がっているだろうとは予想していましたが、まさかこれほどとは夢にも思いませんでした。
 私は、自分のコレクションの価値が上がった喜びよりも、近年原画の評価が急上昇していることにまったく気づかなかった自分を恥ずかしく感じました。と同時に、原画は長期保有することで、立派なコレクタブル資産になると確信したのです。
 アニメ原画を購入しているファンの多くは、純粋に好きな作品の好きなキャラクター、さらに好きなポーズや好きな表情の原画を買っています。その原画を持っているだけで幸せな気持ちになれるからです。ファンであればそれがすべてだと思うのですが、アニメ原画を投資対象に考えるのであれば、好きなキャラクターの絵だから欲しい、に加えて、当時の作画手法を知ることができる貴重な資料を保存したい、という視点も大切にしたいと思っています。
 日本アニメの原画やセル画は海外のファンの間でニーズが急増しているため、どんどん海外に流失しています。アニメ原画をヤフーオークションやメルカリなどの個人間取引プラットフォームに出品したことがある人は、おそらくご存じでしょう。購入者の半数、いやそれ以上は、海外のファンから注文を受けた購入代行サービス業者であるのが実態です。購入代行サービスを利用してでも、日本アニメの原画やセル画が欲しいという海外ファンの気持ちはよく理解できますし、それだけ日本アニメを愛してくれていることには感謝の気持ちしかありません。
 過去に購入した原画の価値が上がったのは、単にタイミングがよかっただけのことです。私は他の人に強引にアニメ原画の収集をすすめる気は一切ありません。ただ、アニメ原画には確かな資産価値があり、これからも価値が上がり続ける可能性が高いことを、できるだけ多くの人に知って欲しいと思っています。それを実証するためにも、私はこれからもアニメ原画を買い続けていくつもりです。
 noteでは、アニメ原画を集める楽しさを少しずつ伝えられたらいいなと思っています。


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