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1講 私たちの生きる現代社会

私たちの生きる現代社会はどのような社会だろうか?この記事を読んでいる方は20世紀に生まれただろうか。それとも21世紀だろうか。現在と10年前、あるいは20年前を振り返ってみた時、最大の違い、変化は何だろうか?答えは簡単である。スマートフォンの普及によって世界中の人が簡単に「つながる」ようになったということである。特に現在の中高生と世代は物心ついた頃にはスマホやパソコンなどのデジタルデバイスが身近にあっただろう。現在の30代の世代の人々は中高生時代はまだスマホがなかったのだ。

 私自身、携帯電話デビューしたのが大学1年生。それを使い続けて15年。スマホデビューしたのは2020年である。かなり遅いデビューである。自分が生きていた過去を振り返ることは簡単である。なぜなら記録が大量に残っているし、自分自身の記憶を頼りに思い出せる。一方、未来はどうだろうか。スマートフォンが販売され始めた2008年にアップルの製品がこれだけ普及する世界を誰が予想していただろうか。2020年当初、武漢で発生した感染症が世界中に影響を与え現在も影響を与え続けている世界を誰が予想しただろうか。未来予測は非常に困難なのである。困難であるが、未来は現在のものからしか生まれないので、今の世界から予想してみたい。私が生まれたころにできた映画で『バックトゥザフューチャー』という作品がある。主人公の高校生であるマーティーが舞台の1985年から、科学者で友人であるドクが発明したタイムマシンで両親の高校時代1955年にタイムスリップしてしまう物語である。この映画は全部で3シリーズある。この2シリーズで1985年から30年後の未来2015年が登場する。そこでは、空を飛ぶ車やロボットが出てくる。喫茶店は無人営業を可能として、食事も小さなピザが瞬く間に大きなピザになる。1985年当時から予測した未来の変化の多くはハード面であった。実際、1985年と2021年を比較してみてもハード面に関してはそこまで大きな違いはない。以下の動画を見比べてもらえれば分かるかと思う。

以下の動画全て見比べてみても、現在生きている我々の世界とほとんど変わらないだろう。あえて違いを強調するなら、やはりスマートフォンの普及であろう。インターネットを経由して誰とでも関わることが可能となった。特にコロナによって人との直接的な関わりが減ったことによるネット内のコンテンツレベルの向上と利用率は格段に上昇した。この流れは今後もしばらく続くだろう。

1966年当時の東京の様子

1992年の東京の様子

2020年の東京の様子

映像を見比べてもらえればお分かりだろうが、大きな違いはない。でも敢えて1992年と2020年の決定的な変化を2つあげるとすれば、①グローバル化と②情報通信技術の発達である。以下のグラフは国土交通省観光庁のホームページから引用させてもらった。

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1980年代後半から1990年代頭まで日本はバブル経済の真っ只中で世界の資産を買い漁っていた。日本人が海外旅行にも積極的に出て行った一方で、外国人からは「日本は高い国」としてあまり観光客を誘致してこなかった。これが、2010年代以降、日本政府観光局の働きかけもある、訪日外国人旅行者数は軒並み上昇していった。外国人が積極的に日本に来るようになった背景には様々理由がある。まず国内的な要因は長引くデフレ不況である。日本は諸外国に比べとにかく物価が安い。この30年間で消費者物価指数がほとんど変化しなかった唯一の国であろう。皆がエレベーターで上昇している時に、自分たちだけ窓の見えないエレベーターで同じフロアに居続けた。結果、日本は「安い国」になったのである。このあたりの詳細は以下の動画で分かりやすく説明されている。

この30年間日本は変わらなかった。その一方で世界経済はどうなったのかといえば、経済産業省HPには以下のグラフがあったので引用させてもらおう。

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簡単に言えば、世界全体はこの30年で急速に豊かになっているのである。変わらない日本と変わっていく世界を対比的に捉えれば、どうして日本への来る外国人観光客の数が増加しているか答えは明白であろう。外国人が国境を超えて移動する人、モノ、カネの動きが加速しているボーダーレス化、世界の国同士が互いに依存度を高めあっているグローバル化が進展している。今後もこの流れは加速していくのだろうか?答えは誰もわからない。グローバル化は人まずおさまり、グローバル化の反動とも言える動きが加速しているとも言われる。アメリカ合衆国トランプ大統領や中国の習近平国家主席などもその例として挙げられる。ただ、情報通信技術の進展は今後も続き、アメリカ型企業のGAFA(グーグル、アマゾン、フェイスブック、アップル)と中国方の企業BATH(バイドゥ、アリババ、テンセント、ファーウェイ)とのネット上でのプラットフォーム争いは今後も続くと予想される。

 私たち日本人が日常生活で使う家電も大きく変化した。私が小学生の頃のテレビといえば、シャープが代表的メーカーであった。現在はサムスンやLGに完全に負けている。日本のメーカーが世界を斡旋していた時代はとっくの昔に終わっているのである。最近は再びソニーの業績が伸びてきているが、「覇権」を取れる段階には至っていない。情報通信技術の進展とグローバル化によって力をつけたのがアメリカと中国である。これは国家というより民間企業の力が大きい。中国の場合は国策として上記の起業と密接な関わりがある。今後日本から上記のような企業が出現するのはなかなか難しい。なぜなら、情報通信産業現在上記の企業が持つ最も大きな強みは膨大なビッグデータである。誰が何時にどこで何をしたかという一見すると些細な情報であっても、それが集まると膨大な価値を持つ。それを握っているのだ。今後はそのデータを持つものが新しい産業を起こす際に有利になる。日本にはそのデータの蓄積がない。今後もこの不利な状況は続くであろう。デジタル技術によるソフト面の変化が今後展開していく。それに伴う既存のハード面がどれだけ変化するか期待したい。

ざっくり言えば、インターネット上の世界の「進化」がさらにすすみ、現実世界も変わっていくだろう。だが、今後の未来は何もないところにビルや道路やダムが作られるというハード面の変化より、ネットを介した生活の変化の方が遥かに大きいであろう。世界全体が国家という概念の枠組みで動くようになったのは17世紀半ば以降、さらに国民国家が誕生したのは20世紀になってからである。それがグローバル化と情報通信技術の進展によって国という概念が溶けてきているのかもしれない。学校の先生は国家の存在を前提として「日本人」を育てるために教育活動を行なっているが、本当に育てなければいけないのは「地球人」なのかもしれない。そんなことをふと感じた。


日本という国家がこれから直面する最大の課題は何だろうか?皆さんはこの質問に何と答えるだろうか。年金問題・雇用問題・移民の問題など様々な問題が挙がるだろう。最大の問題は人口減少社会に突入していることだ。あらゆる問題はそこから派生している。人が減ることにより様々な問題が付随して起こる。働く人が今までよりも少ないから、経済成長がままならない。税金を納める人が以前より少ないから税収不足。あらゆる問題は人口減少から生じている。

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上記のグラフは総務省のホームページより引用させてもらったが、緑色の部分が生産年齢人口である。さらに青色の老年人口の割合も増加中である。日本では15歳未満の子どもの数が減少する少子化と65歳以上の高齢者の割合が増える高齢化が同時に進んでいる。これを少子高齢化という。だが、実際にこの変化によってどんな問題が生じるのか。この変化についての詳細は以下の書籍に詳細が書かれている。

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これまでの我々日本社会で生きてきた価値観や成功ストーリー、東大を頂点としたペーパーテスト学力至上主義、持ち家信仰、大企業出世競争などアップデートしなければならない。『高等学校公共』帝国書院ではこのことを以下のような形でソフトに表現している。「こうしたさまざまな変化のなかで、人々の選択肢は増え、生き方や価値観・考え方が多様化してきた。そのため、これまでのモデルとされてきた生き方や価値観・考え方が崩れつつある。これまでのやり方を重視しようとする考え方と、これまでのやり方を改めていこうとする考え方の対立があるなかで、私たちは将来にわたって成長・成熟していけるような新たな社会のしくみを確立することが求められている。」p.9

皆さんは上記の文章を読んで具体的にどんな場面を想像するだろうか。先生や親の言っていることをそのまま信じて行動していれば、そんな場面は生じないのかもしれない。大切なのは人の言うことを簡単に信じないで、自分で必ず問い(疑い)を持って物事にあたることだ。今日の話はここまでにしておこう。


本日の公共 探究的な課題のお題

1、上記のこれまでのやり方を重視しようとする考え方とこれまでのやり方を改めていこうとする考え方が対立する具体的状況を列挙して、あなただったらどのような解決策を模索して提案するか述べてください。

2、現代の日本社会で直面している変化を伴う課題の中で、あなたが最も解決すべきだと思うものを、理由(根拠)を上げて説明しなさい。

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