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一度、辞めた男のカムバック/大内勇①

一度、競技を辞めると、少し残る気まずさ。
本当は、そんなこと感じる必要はないのでしょう。
でも、一緒に頑張った仲間が必死に戦っている。
そう想うと、負い目を感じるのが人間。
そして、その存在に感化され、
新たな一歩を踏み出すのも、人間です。

6月4日(土)に行われた富士通フロンティアーズvs
ディアーズフットボールクラブの春季交流戦。
若手選手の活躍が目立った、この試合。
最重要ポジションのクオーターバック(QB)は
2人の選手に任されました。

ひとりは立命館大学出身の注目ルーキーQB野沢研。
そして、もうひとりは、自身で
「多分、僕のことを知らない人が大半だったはず。だから“なにわの根性”見せてやろうと思ってました」
と語る、QB大内勇です。

一度フロンティアーズから離れた大内は、
この試合で先発出場を果たすと、
タッチダウンパスを2本、
2Q中盤にはスクランブルから
ロングゲインを決めるなど大活躍。
大きく勝利に貢献しました。

2018年に一般選考で富士通グループに入社し、
一時はアメリカンフットボールを辞めた彼。
実は、2年前まで違うチームでプレーしていた、
異色の経歴の持ち主は、どんな経緯で
復活を果たしたのでしょうか。

社会人で続けるマインドはなかった

幼馴染のお兄さんの影響から、高校一年生で
アメリカンフットボールを始めた大内。
「全員でボールを投げて一番遠くに飛んだから」
という理由でQBとなった彼は、
投げる技術に加えて、走りも強い、
”走れるQB”として高校・大学で活躍。
2014年にはU19日本代表に選ばれるほどの実力を持つ選手でした。

そんな彼は、社会人になったのを機に、
アメリカンフットボールを辞めてしまいます。

「元々社会人で、アメフトをやるつもりがなかったんです。それまでずっとスポーツをやってきて土日も休みじゃなかったので、社会人では普通の生活を送ろうと思っていました。富士通にも、選手で採用されたのではなく、一般選考で内定をいただきました。アメフトではなく、仕事で頑張ろうと思って入社したんです」

それでも入社後、すぐに富士通グループに
入社したことがチームに伝わり、練習に参加。
2018年の入社から約2ヶ月間だけ、
チームに練習生として在籍することになります。

ただ、フロンティアーズは日本一のチーム。
中途半端な気持ちで、選手を
続けることはできませんでした

「一流選手ほどのマインドはなくて」と
語る大内はコーチ陣とも話し合いを重ね、チームを退部。
「以降は1年間ほど何もスポーツはせず、自分のやりたいことなどをやらしてもらいました」と、アメフトから離れたのです。

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楽しくやりたい

それでも、やはり恋しく
なったのはアメリカンフットボール。
2019年シーズン、大内はX2のクラブ
「ブルーサンダース」というチームで、
競技に復帰します。
それは「楽しくプレーしたかったから」でした。

「ないものねだりじゃないですけど、アメフトのない生活をしていて、刺激が足りないなと思ってしまって…。東京に出て来た、高校で一緒だったメンバーと共に、日本一を目指すほどではなく”楽しくアメリカンフットボールがしたい”と、趣味レベルでプレーを始めたんです」。

そのまま大内は、X2で約半年間プレー。
でも、その中で自分の本当の気持ちに
気付く瞬間がありました。

「X2のシーズンが終わったタイミングで、フロンティアーズOBの平本(恵也)さんから連絡をいただいて、『もう1回フロンティアーズでやらないか』と誘っていただきました。個人的にもX2でプレーして、レベル含めて物足りなさがあった。それで、もう1回戻れるなら戻りたいと思ったんです。結局、厳しい環境を求めてしまったんですよね(笑)」

復帰への道

復帰に向けて、ヘッドコーチにも相談。
スタッフにも移籍届を出してもらうなど
手続きをしてもらい、
再度フロンティアーズに復帰したのが2020年。

そこで感じたのは、
自分を気にかけてくれた方々、
協力してくれた皆さんへの感謝でした。

「声をかけてもらえたのは、嬉しかったですね。先輩の皆さんもよくしてくださった。仕事も、アメフトに復帰したら周りに負担もかける。でも、協力してもらえる人がいるのは、とても幸せなことだと思っています」

確かな充実感と、成長できる環境。
その中で勝負しようと、大内は決めたのです。

「フロンティアーズは日本一を目指せる環境にあります。そこに飛び込むことによって、小さな成功体験をたくさん経験できる環境に身を置けた、と思っています。仕事もスポーツも、大人になるにつれて怒られる回数が減り、成長を感じにくくなる。でも、フロンティアーズに戻ると、(レベルが高くて)”できないことしかない”。その中で、『今日はこれができなかったから、明日これをできるようになろう』という、当たり前の小さな成功体験がある。この失敗から学びのプロセスを理解するのが、今は大事かなと、すごく感じています」

➡②に続く


【🏈#8 QB(クオーターバック)】
大内勇 ISAMU OUCHI
非凡な才能を持つアスリートQB。フィジカル向上に取り組む。パスを投げれないと判断した時のスクランブルは秀逸。
https://sports.jp.fujitsu.com/frontiers/8ouchi/

文:守本和宏/ナノ・アソシエーション
2009年より富士通フロンティアーズの取材・撮影・WEB制作・インフラ管理などを担当。東京での企画・制作会社勤務を経て、2004年からスペイン・バルセロナに移住。フリーのサッカーライターとしてヨーロッパ選手権などでライティングを担当。日本帰国後は企業スポーツの取材・撮影など、WEBを中心にスポーツコンテンツの制作に関わる。

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【試合日程】
◆春季交流戦
富士通フロンティアーズvsIBM BigBlue
6月19日(日)14:00〜 @富士通スタジアム川崎

ご声援よろしくお願いいたします!
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