万象3
日本ファンタジーノベル大賞の優秀賞と大賞受賞者による書き下ろし巨大アンソロジー
万象3 小田雅久仁 粕谷知世 西崎憲 日野俊太郎 南條竹則 冴崎伸 北野勇作 石野晶 大塚已愛 久保寺健彦 森青花 斉藤直子 三國青葉 柿村将彦 藤田雅矢 堀川アサコ 勝山海百合 関俊介
惑星と口笛ブックス
参加者は十八名で作風は日本ファンタジーノベル大賞の傾向そのままに多岐にわたります。想像力への旅をお楽しみください。
『万象3』には、猫&路上園芸SF「ブランコ」で参加しています。
……郵便ボックスだけでも三十二鉢もあるのに、さらに足もとにはボックスに入りきらないゴーラムや丸サボテンなどが、似たような小さな植木鉢に植えられ、ぎっしりと並んでいる。よほど多肉植物好きなのだろう。
そして、家の玄関の扉には「新みらい創造研究会」という看板がかけられていた。
「新みらい……」
看板はともかく、三十二個の植木鉢が並ぶ郵便ボックスがとても気になって、次の日から仕事に行くときに少し回り道をして、その家の前を通ることにした。そこには、ブランコが来ていた。なにか気に掛かっているのだろうか、植木鉢のそばへと尻尾を立てて歩いて行く。そのとき、どこか違和感を感じた。
植木鉢の並びが、昨日と微妙に違っていたのだ。
立ち止まってじっと見ているのも怪しいので、「ブランコ」と呼びながら鉢植えの並びをさっとメモにとった。グリーンネックレスは「グ」、ゴーラムは「ゴ」、アロエの「ア」、丸サボテンは「○」、オブツーサの「オ」。そして「豆」が銀杏の豆盆栽。ボックス毎に二鉢ずつが四つ。それが四段。
一段目:グ○ アア ○ゴ ゴグ
二段目:○ゴ グア ゴゴ ○ゴ
三段目:○オ ○豆 アグ ゴオ
四段目:ゴグ グア ○ゴ ○グ
ひときわ目立っていた銀杏の豆盆栽が、郵便ボックスから足もとへと移動し、代わりに三段目はゴーラムが横一列に並ぶ配置となった。なにかある。……
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