【マンガの紹介など】 藤子不二雄が好きなのに…
藤子不二雄が好きなのに。まったく不覚をとってしまった。
まず不覚の一つ目は、藤子・F・不二雄の短編特集が組まれたハヤカワS-Fマガジンの最新号だ。「あっ、今日が発売日だったか!」とその日の夜になって気付き、あわてて近所の書店に駆け込んだけれど、見つけられなかった。入荷しなかったのではなく売り切れてしまったのだろう、今回のSFM誌は事前の反響が相当大きかったそうだから。なんでも、ここ30年で最大の部数を刷っているという。「へえ! シャーロック特集号とかタイバニ特集号よりも!?」と一瞬思ったが、あれらはハヤカワミステリマガジンだったっけ(失礼なやつ!)。SFM誌とHMM誌はどちらのほうが部数が多いんだろう? さておき、まだ藤子F特集号は買えていない。おれのばか!
もうひとつは、先日、放送第1週分と原作コミックの感想を書いたNHKの藤子・F・不二雄SF短編ドラマのことだ。せっかくなので2週目3週目と続けてみようかしらと思っていたのだけど、2週目の「定年退食」と「テレパ椎」のずっしりしたコンボに普通にくらってしまい、クラクラ……と書けずにいるうちに3週目が放送されてしまった。おれのばか! ばか! ばか!
というわけで今回は1週分飛ばして、第3週に放送された作品の原作を読み返してみた。2週目の分についてはそのうち書く。なあに、今週末の「流血鬼」のあとは、次の放送までちょっと間が空くのだ。6月だから、時間はたっぷりある。楽勝じゃないか!
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「昨日のおれは今日の敵」(COMICモーニング1982年11月4日号)
誰もが何度もくぐる夜、多少ぐうたらしてりゃなお共感できる、朝までにどうにかしなくちゃいけないあの夜の話。初期ドラえもんのドタバタ傑作「ドラえもんだらけ」から時間の行き来の構成を少し捻って、さらに〝おれっていつもこうなんだ〟なブルースにまで仕立てた傑作コメディ。思えば「ドラえもんだらけ」が描いていたのは、それでも「はやく、宿題やってねようね。」という高潔な魂だった。ちょっとした計算違いや諍いはあっても、あいつはたった5個のどら焼きの約束を律儀に守って、晩のうちに立派に宿題をやり遂げる。我々はちがう。「ちょっと手をぬいて+神がかって+死にもの狂いになれば=いける!=寝れる!」これだ。完璧な計算で捻出したなけなしの睡眠時間が、どういうわけか我々の計画を破綻に導くのだ、いつだって。
究極、丸々としたキャラクターがぶつくさひとりごとを言いながら右往左往してるってだけで〝まんが〟的楽しさは十二分で、この点実写化はやや分が悪いけれど、そこをねじ伏せる塚地はとても良かったです。
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「親子とりかえばや」(ビッグコミック1982年12月10日号)
↑こうやって書き出してみてから、息子側の視点がすとんと抜け落ちていることに自分でびっくりしてしまう…。
大人向け・異色サイドではめずらしいくらい、というかFマンガぜんぶひっくるめても、入れ替わりネタでこんなにハートウォーミングなものは多くないかもしれない、清々しく軽やかなエピソード。スタンダードな親子ものゆえか、実写版は、ここまで放送された中ではもっとも随所のアレンジが目立ち、どれも邪魔にならずうまくいっていたと思います。今のところいちばん好きだな。
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今回も、藤子・F・不二雄大全集のデジタル版で読み直しました。勢いで、『少年SF短編』と『SF・異色短編』については全巻揃えてしまったよ。
ぼくはもともと中公文庫と小学館文庫でSF短編を読んだクチで、その後PERFECT版にも手を出し、今回デジタル大全集が揃って、ついにタブレットひとつでいつなんどきでもあらゆるSF短編を参照できる人間になったわけだけど……それでも正直ちょっと気にはなっています、コンプリート・ワークス。もし買うんならアルティメットエディションだが、しかしな…。
藤子・F・不二雄大全集 SF・異色短編4 (「昨日のおれは今日の敵」収録)
目下話題のハヤカワS-Fマガジン掲載作を中心に収録。「ヒョンヒョロ」「自分会議」はビッグコミック発表の「わが子スーパーマン」「アチタが見える」とともに〝1971-1972年子ども四部作〟とぼくの中でだけ呼ばれているのだが、この時期のF先生は『ドラえもん』と『新オバQ』の2作品を複数の学年誌で並行連載しており、その合間にこれらを描いたという事実に震えが止まらない。
藤子・F・不二雄大全集 SF・異色短編2 (「親子とりかえばや」収録)
75年以降のビッグコミック掲載作を収録。1冊の中にヨドバ氏のカメラシリーズがすべて収録される機会って実は少ないのでは? 太陽の使者っぽい〝鉄人〟で25頁たっぷり遊んでみせる「鉄人をひろったよ」を読み、うーんたしかにこの何年か後、より同時代的なデザインのロボットにザンダクロスと名付けてバレエを踊らせる人のマンガだな、と思うなど。「異人アンドロ氏」は続きもみてみたかったですね。
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Twitter: @Fujita84RH
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