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遠慮のない政策遂行が菅政権の特徴になるだろう

先日書いた、この記事が多くの方に読まれています。

この学術会議の人事問題が菅政権の一つの特徴を示しているというのが私の指摘だったわけですが、その特徴は多分、今後も多くの人を驚かせることでしょう。

その特徴となる菅政権の肝を考えてみたいと思います。

安倍政権は官邸主導と言われた

安倍政権は、官邸主導であったと言われます。

その極は、2つありました。

首相秘書官と内閣官房です。

キッズ向けのページとはいえ、すごい雑な作りだなあ。イラスト屋さんの流用なのか、発注なのか。少なくても総理大臣を支える人だということはわかります。

秘書官の内訳は慣例的に政務担当1名、事務担当6名の計7名で構成される。また、秘書業務を円滑に行うため、官邸には「総理大臣秘書官室」が設置されており、専従スタッフが秘書官の命を受けて秘書業務の実務を担当する。

この秘書官が経産省から送られてきた人が多かったので、安倍内閣は、経産省内閣などと揶揄されていました。

 7年8カ月にわたった安倍内閣は時に「経産省内閣」と呼ばれた。だが、その終焉とともに、経産官僚たちにも変化が訪れている。

もう一つの総理を支える極は、内閣官房であり、その中心にいるのが官房長官、つまり菅さんでした。

内閣法に基づき、内閣に置かれる「内閣の補助機関」であり、「内閣の首長たる内閣総理大臣を直接に補佐・支援する機関」である。主任の大臣は内閣総理大臣であり、長である内閣官房長官は国務大臣をもって充てる。

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この図を見てもわかるように、内閣総理大臣は、内閣官房と補佐官が支えているのですが、この補佐官の他に、秘書官がいるわけです。

つまり秘書官の方が、より総理に近く、サポート色が高いといえます。

これを簡単にまとめてしまうと。補佐官が立案したものを総理が実行する際に、秘書官が事前調整するというような関係があったのが、安倍内閣でした。

ある者は官邸から官庁の頭越しに指示を出し、ある者は上役を怒鳴り上げ、またある者は情報に目を光らせ、“隠密”となって敵を恫喝する。

当初は、一体となって安倍総理を支えていたはずの、この秘書官チームと官房チームが最後は離反したと言われています。今井秘書官と菅官房長官の不仲、などと記事になっていましたね。

それがわかるのが、今回、菅総理になってからの秘書官人事です。

菅総理は、官邸をどう変えたのか

菅義偉首相は、6人の省庁出身の首相秘書官のうち4人を自身の官房長官秘書官から抜てきした。首相秘書官は局長級から、官房長官秘書官は課長級から起用することが多かったが、異例の登用となる。他に過去に自身の官房長官秘書官を務めた1人も起用しており、気心の知れた秘書官を配置することで政権の円滑なスタートを図る考えだとみられる。

つまり、安倍総理時代の官房を支えたメンバーを官邸に移動させたわけですね。

菅さんに支えてきた人たちをそのまま連れて行ったというわけです。

これは、これまでの政権では見られないことです。なぜかというと、官房長官がそのまま総理になるというのは例がないからですね。

経験者は、平成おじさんこと小渕さん、福田さん、安倍さん、そして、令和おじさんこと菅さんですが、横滑りしたのは初めてです。

だから、官房からそのまま官邸に持っていくということはなかったわけです。さらにいえば、安倍政権以前の官房は、それほど権力を持っていませんでした。官房長官以外は、あまり目立たなかったし、官邸や内閣府という総理周りに権限が集中していませんでした。

官房長官が注目され、内閣官房に力があるようになったのは、やはり内閣人事局の創設以降でしょう。

そして、この内閣人事局の力を内閣官房で最も使ってきたのが菅さんです。

菅政権は官邸主導を加速する

それをさらに強めそうな勢いですよね。これが、菅政権の最大の特徴につながっていくのです。

 行政権力を官邸に集中し、トップダウン型で迅速に政策を実行する官邸主導。橋本龍太郎政権に源流を持ち、菅氏が継承するとしている安倍晋三政権の下で一つの完成形を見た統治手法だ。内閣人事局を通じた省庁の人事コントロール、絶対忠誠を誓う「官邸官僚」の存在が特徴。司令塔は政府ナンバー2の官房長官、菅氏その人であった。

そして、その官房で司令塔の指示を受けて働いていた人たちを官邸に集めたということは、官邸が直接人事に介入するだろうことは予測されます。

安倍さんは、政治エリートなので細かいことはある意味で「よきにはからえ」というところがありました。それを利用した秘書官の横暴がコロナ対策の数々のミスリードだったと言われます。

しかし、菅さんは、「たたき上げ」ですから安倍さんのようにお任せといかず、かなり細かいところまで指示を出すでしょう。その指示の出し方と効果が上がったことでのし上がってきたわけですから、自分の判断と指示に自信を持っているからです。

そして、その細かい指示に正確に従う人たちで周りを固めたとすれば、これは官邸主導が、安倍政権以上に加速すると考えて間違い無いのではないでしょうか。

菅総理の怖さは「たたき上げ」であること

事務の首相秘書官は1増の6人になり、うち4人は官房長官秘書官からの異例の持ち上がりとなった。安倍チームからの続投は防衛省出身のみ。1増分は厚労省で、菅は官房長官秘書官を終えて本省に戻っていた鹿沼均を再び自分の元に置いた。不妊治療対策や新型コロナ対策で菅が厚労省に介入する場面が増えるためとみられる。

この布陣が、経済重視の安倍政権から厚労省対策、総務省対策を中心とする菅政権の目玉政策実行のためにあるのは明らかです。

その政策は、この辺りですよね。

平井卓也デジタル改革担当相に、政府のデジタル化を一手に担う「デジタル庁」の発足作業を急ぐよう命令。田村憲久厚生労働相にも、不妊治療への保険適用の検討加速を求めた。河野太郎行政改革担当相は早くも、省庁の弊害を国民から吸い上げるオンライン目安箱「縦割り110番」を開設した。

そして、当然、コロナ対策です。

それだけに、厚労省が大事ですし、デジタル庁と、携帯電話の値下げというわかりやすさも重要です。

安倍前総理には、一度「美しい国」を掲げて失敗したという負い目があり、それだけに、経済の具体的な上昇をアベノミクスという言葉で引っ張りました。しかし、政治エリート出身者(世襲議員ということです)の常として、前例を大きく外れることに怖さがあります。自民党の王道を継承する必要があるわけです。大企業優先で、皇統への敬意とか靖国神社は行かないとねとか、やることが色々あります。

そして、エリートとしての立ち居振る舞いが求められ、各方面への目配を細かくするということよりも、大きな方向性を強く打ち出して、その実施は各大臣に任せるという態度を見せなければなりません。

しかし、菅総理には、そうしたエリートにはない強みがあります。

先ほどの記事でも書いています。

菅には安倍のような国粋的なイデオロギーはない。権力への執着は人一倍強いが、特殊な国家観を持たない分だけ時々の利害得失で政策を選べる強みがある。こうして「安倍継承」を掲げながらの安倍離れがじわじわと進んでいくのだろう。

成果さえ上げればプロセスは問わないという「泥臭い」やり方が許されることです。

そして、官邸が菅総理の具体的な指示にしたがって、泥をかぶることを厭わずに動いていく政治になるとすれば、それは、実は、独裁的と言われた安倍政権よりもさらに怖い側面を持っているといえます。

学術会議の人事問題に菅政権の要諦が見えた

それが現れたのが、今回の学術会議の人事問題ではなかったのでしょうか。

人事の決裁は、内閣府日本学術会議事務局から内閣府人事課を経由して首相官邸に上げられる。政府関係者は「内閣府は『首相官邸側がいきなり覆した』と言っている。人選に関して内閣府が身分照会をかけることはなく、今回もそのまま推薦者全員を官邸に上げた」と指摘した。別の政府関係者は「事務方は今回、当事者能力はないから国会でも答弁のしようがない。官邸に聞いてくれ、となるだろう」と語った。

その先鞭をつけていた16年の人事も記事になっています。

関係者によると、複数の会員が70歳の定年を迎えるのを前に学術会議は16年、新たな会員の候補者を選び政府に相談を持ちかけた。官邸側は候補者2人に難色を示し、欠員が生じたままになったという。

この時学術会議は、今回ほどの抗議はしていないようですが、欠員だからですかね。

しかし、そういう緩慢な態度が、今回の任命拒否を招いたことを学術会議も考えなければならないでしょう。一度あれば、前例になるからです。

首相の任命権を定めた日本学術会議法について2018年に内閣府と内閣法制局が協議し「解釈を確認した」と明らかにした。

この時に、2016年の事例が前例になったことは十分予測されます。つまり、学術会議は自分の首をすでに絞めていたのかもしれません。

そして、人事に介入することで発言権を増す、もしくは相手の反応を見るという菅政権の方法が見えてきたのではないでしょうか。

そこを甘く対応すると、今回の学術会議のようなことになるでしょう。

官邸がリードするのではなく、官邸が全てを決めるのが、菅政権の官邸主導であるということが、この事件から見えてきたということなのです。

そこに、スマートさはいらない。それがたたき上げのスタイルなのですから。




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